ルート見直しで応酬 与党整備委が会合 佐々木氏「米原検証を」 小浜推進の委員長に要求
北陸新幹線大阪延伸を協議する与党整備委員会は20日、国会内で開かれ、委員の佐々木紀衆院議員は「米原ルート」の検証を要求した。現行の「小浜ルート」は事業費、工期の増大で前提条件が変わり、地元の石川県では米原を求める意見が多いと強調。小浜を強く推す委員長の西田昌司参院議員(京都府選出)とルート見直しを巡って激しい応酬を繰り広げた。 ●西田氏「今さら何を」 会合は冒頭を除いて非公開。出席者によると、佐々木氏は10月の衆院選でルートの再検証を訴えたことに触れ、「石川県内では経済界や県民会議で米原を含む再考を求める決議が出されている」と語った。 その上で、「当初はルートを検証して小浜に決めたが、工期や工費で条件が変わった。もう一度データを示すべきだ」と主張した。 これに対し、西田氏は「今さら何を言っているのか。委員を別の人と差し替える」と感情をむき出しに。さらに、馳浩知事は小浜を推進する杉本達治福井県知事に同意しているとして「個人的な事情を持ち出すな」と不快感をあらわにしたという。 佐々木氏もひるまず、「委員会の外を一歩出たら米原の意見が強い。この声にどう応えるのか。このまま進めても国民の理解は得られない」と訴えた。 2人のやりとりを見ていた委員の稲田朋美衆院議員(福井1区)が「一度(小浜で)決めた。後戻りするような議論はやめよう」と割って入ったものの、佐々木氏は「小浜では工期が最短でも25年になる。福井県でも25年かかる新幹線はいらないとの声はある」と反論した。 ●京都やJRに聴取 20日の会合では、沿線自治体などから近く意見聴取する方針を決めた。3案ある小浜の詳細ルートから年内に1案に絞り込むための判断材料とする。 聴取対象は福井県と京都府、京都市、大阪府、JR西日本で、知事らの出席を求め、12月上旬までに行う。大阪延伸を巡っては建設財源の確保や自治体の財政負担の軽減、環境保全なども課題となっており、詳細ルートと併せて見解を聞く。 ●「議論になるのか」 会合には自民の佐々木、西田、稲田の3氏と、野上浩太郎参院議員(富山県選出)、公明の竹内譲衆院議員(比例近畿ブロック)の5氏が出席した。 これまでは自民、公明の沿線議員が委員となり、自民からは各府県の選出議員が2人ずつ入って議論を進めてきたが、今回から各府県の議員を2人から1人に減らした。委員は15人から8人に半減し、この日の会合は前日夕に急きょ決まったため、3人が欠席した。 西田氏はメンバーを減らした理由について「衆院選で落選した委員がいたことに加え、政府の要職に就いた人もいた」と説明。「委員が多いと議論が前に進まない」とも語った。一方、与党内では「こんなに少なくて議論になるのか」と疑問視する声が聞かれた。 ●委員半減「理解できぬ」 整備委離れた岡田氏 整備委の規模縮小に伴い、委員を離れた岡田直樹参院議員は20日、北國新聞社の取材に「年末の予算編成の大事な局面で委員を半分にするのは到底理解できない」と強い口調で断じた。 岡田氏によると、西田氏が先週、岡田氏の国会議員事務所を訪ね、整備委の人数縮小を切り出した。岡田氏は「国家的事業である敦賀以西の延伸は沿線以外の国会議員を増やしていいくらいだ。急に半減させるのは筋が違う」と反対した。 西田氏は意見を聞き入れず「1府県ごとに1人」とする方針を譲らなかった。岡田氏は「若い佐々木氏に議論を託す」として整備委を離れる意向を伝えた。 ●25日に再検証研究会 2002年の初当選以来「新幹線議員」として敦賀以西の議論に携わってきた岡田氏は、引き続き整備に力を注ぐ考えを強調。25日にはルートを再検証する研究会を都内で初めて開く。 小浜の工期や事業費が大幅に膨らむ中、同じく物価高や作業員の働き方改革で以前の試算より増大すると予想される米原や湖西の概算を試みる。初回は交通政策が専門の京大名誉教授・中川大氏に意見を聞く。佐々木氏を含む県関係国会議員にも出席を呼び掛ける。 岡田氏は「このまま見切り発車で小浜ありきで進むのは将来に思わぬ負担が生じる懸念がある。責任を持って取り組む」と述べた。