国宝級の副葬品を次々と発見! 奈良「富雄丸山古墳」は誰の墓なのか?
昨年から今年にかけて、国宝級の副葬品が次々と発見されている日本最大の円墳、富雄丸山古墳。そこには誰が眠っているのか? その謎に迫った! 【写真】富雄丸山古墳から出土した、全長2m37㎝の「蛇行剣」ほか * * * ■最大の円墳、最長の剣、特殊な盾を持つ人物とは? 奈良県の富雄丸山古墳で、国宝級の副葬品が相次いで発見されている。 昨年はヘビのようにクネクネと曲がった2m37㎝の「蛇行剣」と、防具の盾のような形をした鏡「だ龍文盾形銅鏡」が出土した。 また、今年3月には〝卑弥呼の鏡〟といわれる「三角縁神獣鏡」と思われるものも見つかった。ここには誰が埋葬されているのか。そして、これらの副葬品は何を意味するのか。 まずは、富雄丸山古墳がどんな古墳なのかを発掘調査を行なっている奈良市埋蔵文化財調査センターの柴原聡一郎氏に解説してもらった。 「富雄丸山古墳が造られたのは4世紀の後半です。この時代、地域の有力者が埋葬される古墳は鍵穴のような前方後円墳が普通です。しかし、富雄丸山古墳は丸い形をした円墳です。ただし、その直径は109mと大きく日本最大の円墳になります。 この富雄丸山古墳は3段造りになっているのですが、その墳頂(頂上)ではなく、造り出しと呼ばれる裾野の出っ張り部分から蛇行剣と盾形銅鏡、三角縁神獣鏡と思われる鏡が見つかりました」 では、富雄丸山古墳から出土した蛇行剣とはどんなものなのか。古墳時代に詳しい大阪大学の福永伸哉教授に聞いた。 「剣の長さが2m37㎝で国内最長のものです。古墳時代の剣は、蛇行していないものも含めて1mを超えれば日本最大級といえます。その2.5倍近いもので、しかも蛇行している。こんなものが出てくるとは、多くの考古学者も予想していませんでした。ですから何に使うかは私のほうが知りたいくらいです(笑)。 ただ、剣というのは武器ではありますが、邪悪なものを寄せつけない魔力を持っているとも考えられていました。その魔力を持っている剣をさらに蛇行させるということで、魔力を倍増させて邪悪なものから自分たちを守るということを意識していたと思います。その蛇行した剣の長大なものを作ったわけです。 そして、この蛇行剣のさやには石突がついていたことから、剣を立てていたのだろうということがわかりました。例えば、軍隊が出動するときなどの儀式でこの蛇行剣を立てて軍隊の士気を高めたり、魔力を与えてもらったりしたということは可能性としてあります。さすがに2mを超える剣を振り回すのは大変でしょうから。 また、少し専門的になりますが、蛇行剣の出土が多くなるのは5世紀からです。それよりも約50年早いということは、おそらく日本で一番古い蛇行剣のひとつでしょう。そして、魔力を倍増させる蛇行剣という剣の試作品ではないかと思っています。 さらに、当時の技術力が高かったこともわかります。2mを超える剣を作るわけですから、鉄を熱してトンテンカンと打つ大きな鍛冶炉が必要です。そして、その炉に風を送る送風装置や内部の温度を高める技術など付帯する設備や技術も必要になります。 すると、われわれ専門家が想定していた4世紀後半の鉄器生産のイメージが一新するような大きな発見でもあるわけです」