覚醒を呼んだ首脳陣ローテ…1軍合流即「100%なんて無理」 奮起促した“外からの一言”
「どちらを選ぶかは選手次第です。自分で選べるように、勇気を持たせてあげるのが仕事」
高橋打撃コーチは津山工(岡山)から、俊足で強肩強打の捕手として1996年のドラフト7位で日本ハムに入団。プロ2年目の8月にヤンキース傘下のチームに留学し、のちに日本ハムの監督になるトレイ・ヒルマン氏の指導を受けた。 プロ7年目、この年に就任したヒルマン監督に抜てきされ、レギュラーの座を掴むと、翌年はシーズン26本塁打を放ちオールスターにも初出場。2009年には打率.411で交流戦首位打者に輝き、ゴールデン・グラブ賞、ベストナインも獲得し、のちに巨人やオリックスでも勝負強い打者として活躍した。 指導方法は至ってシンプルだ。2022年から就任したオリックスでは「練習の内容はすごく良かったよ。今日の試合の結果が悪くても全然構わないよ」と若い選手をリラックスさせる。打席に向かう選手には2つの方法を用意する。「どちらを選ぶかは選手次第です。『こうしなさい』ではなく、どちらを選ぶのか背中を押してあげる作業です。確率が高いと思う方を自分で選べるように、勇気を持たせてあげるのが仕事です。自分の価値観を押し付けることになりますから、アドバイスはしません」。 この指導で前年に.216にとどまったチーム打率を2022年は.248まで引き上げ、本塁打も30本増やした。今回、高橋コーチが合流してからチームは10試合で6連勝を含む7勝3敗。この間のチーム打率は.283と上昇し、リーグ4連覇に向けて踏みとどまることができた。 高橋コーチの言葉を、受け止めた選手たちがいる。交流戦で安打を量産した西川龍馬外野手は「外から見ていた人と、中で見ている人では見え方が違います。自分たちがそう感じていなくても、周りからはそう見えたかもしれないので。そこはみんないろいろと気付いたこともあったと思います。僕は、思い切りがなかったのかなと思いました。だからこそ、自分を信じて思い切ってやろうと思いました」と受け止めた。 交流戦で打率.428と打撃絶好調だった西野真弘内野手は「僕らの心理状態を見て、的を射たことを言って下さったと思います。自分で自分を追い込んで、苦しい心理状態で試合に出ても難しいというのは、聞いていて納得できました。すごく心に響きましたね」と振り返る。さらに、2軍で高橋コーチと過ごす時間が長かった太田椋内野手は「僕はファームで話を聞いていたので驚きませんでしたが、心に刺さった1軍の選手の方たちは多かったのではないでしょうか」と明かす。 高橋コーチは「まだ、あまり手応えは感じていません。(打率向上は)たまたまかもしれないし、これから徐々に効いてくるのかもしれない。即効性があるとは僕も感じていません」。ただ、打者たちの意識は“明らか”な変化が生まれ始めている。
北野正樹 / Masaki Kitano