オールバーズ は3分の1を閉鎖。D2Cブランドを圧迫する実店舗の過剰な拡大
デジタルネイティブブランドはこの数年間、実店舗小売の存在感を高めることに積極的だった。しかし現在、その多くが当初の成長計画を撤回しようとしている。 シューズブランドのオールバーズ(Allbirds)は、2024年に全国で「業績の芳しくない」10~15店舗、つまり全店舗の約3分の1を閉店する予定だ。一方、アスレジャーブランドのアウトドアボイシズ(Outdoor Voices)は、すべての小売店舗を閉店した。マットレス会社のパープル(Purple)は今年3月の決算発表で、店舗の新設ペースを落とし、既存店舗の収益性を高めることに注力していくと語った。 D2Cブランドはこの数年、パンデミック渦中における賃貸料の値下げや自由裁量商品への需要の高まりに後押しされ、店舗数拡大を強く推進してきた。現在、地主はパンデミック期にテナントに提供していたお得なキャンペーンをストップさせている。同時に、自由裁量商品の小売販売も数四半期前ほど好調ではない。結果としてD2Cブランドは、収支改善のために実店舗小売戦略を再調整している。
過剰な店舗拡大がビジネスを圧迫
「問題の核心は正直なところ、あまりに意欲的すぎる計画を立てた企業が過剰な拡大を行ってしまったことにある」と、マーケティング企業のベラルディ・ウォン(Belardi Wong)でプレジデントを務めるポリー・ウォン氏は語る。「小売店舗の新設、維持、運営に要するコストは損益計算書においてもっとも高額な項目だ」。 いくつかのD2Cブランドには店舗面積の拡大という野心的な計画があり、それがコスト増加につながっていた。たとえばオールバーズは、店舗数を2020年の22店舗、2021年の35店舗から、2022年末には58店舗に拡大させた。この店舗拡大計画により販売費および一般管理費が増大し、2021年には1億2220万ドル(約185億円)で純収益の44%だったのに対し、2022年には1億6670万ドル(約253億円)で純収益の56%に膨れ上がった。 オールバーズは店舗閉店により成長を促進させ、資金の余裕を得たいと考えている。同ブランドの店舗閉店の決断は約700万ドルから800万ドル(約10億6000万円から12億2000万円)の財政的影響を与えるだろう。同社によると、主にアパレル商品が多い新店舗や大規模店舗の閉店を検討しているという。 実店舗は依然として、ブランドにとって長期戦略の重要な役割を担っているとウォン氏は語る。実際に、売上の80%は今でも実店舗が上げていると同氏はいう。しかし自由裁量商品への需要が低下している現在、多くのブランドはトップラインの拡大ではなく収益性に重点を置いている。 「店舗にはコストがかかる。まず投資が必要で、収益性の達成はあとからだ。一度に多くの店舗を展開すれば、採算の合わない莫大な投資となることが多く、ビジネスを破産に導く」。