「京都のねこは、わりとのんびりしています」動物写真家・岩合光昭さん
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動物写真家・岩合光昭さんの写真展「ねこの京都」が日本橋三越本店で開かれている(5月3日~15日)。1年あまりの間、舞妓のいる祇園、神社や郊外などで京都のねこと向き合って来た岩合さん。ねこを通して、岩合さんには何が見えたのだろうか。
主人公はネコ
写真展は「京都のねこ」ではなく、「ねこの京都」だ。「僕の主人公は、人ではなくネコですから」と岩合さん。ネコを通じて京都が見えてくる、という意味合いを込めた。 京都では、2016年1月からロケを開始し、今年4月まで続いた。この間、合計3か月弱は京都に行き、京都市内や南丹市美山町などで20~30匹のネコを撮影した。 祇園のお茶屋のブル(3歳・オス)の撮影は、当初難航した。岩合さんが部屋に入るなり、部屋の隅っこに行って動かない。岩合さんは「一見さんお断りというわけではなく、女性の世界のお茶屋に、男性の僕が入っていったことに対する違和感があったのではないでしょうか」と見る。
ネコに心を開いてもらうには
ネコに心を開いてもらうには、どうすればいいのか。岩合さんによると「ネコが嫌がることをしないこと」だという。 お茶屋の中は暗かったので、最初はスタンドのついたライトのセットを2、3セット持ち込み、カメラ用の三脚もセットしたが、これをブルが嫌がった。ネコは自分よりも大きな物体を警戒するためだ。岩合さんは、ライトも三脚も使うのをやめた。カメラにも慣れてもらおうと考え、ブルがよくいる舞妓さんたちが休憩する部屋にただ置いておくだけで、撮影はしなかった。 お茶屋の人々は始め、岩合さんをお客様を同じように扱ったが、次第に緊張せずごく自然に対応するようになってきた。「それも良かったんじゃないかと思うんです」と岩合さん。 通いはじめて3回目くらいの時。お茶屋の廊下で、ブルと岩合さんだけになった時があった。岩合さんは床に寝そべって、「カメラを向けていい?」とブルに尋ねたところ、ブルは眠そうな顔をしたという。これは油断をしている、と考えた岩合さんがカメラのシャッターを押すと、ブルはいきなりごろんと寝っ転がった。 「動物がお腹を見せるのはリラックスしているポーズ。これは大丈夫だと思いました」。以後、リラックスしたブルの姿を撮影できはじめた。見た目や立ち振る舞いに品の良さを感じさせるネコだったという。 1年あまりのあいだ、京都に住むネコの春夏秋冬の姿を追い続けた岩合さん。「京都のネコは慣れてくると行くたびに違う顔をします。緊張の度合いが減り、親しくなります。京都の人と同じです」。