廃団地を90万円で購入して貸し出したら…電気・ガス・水道なし築73年の「廃団地」が満室の不思議
■やり方次第では不利な物件も魅力的になる この成功から吉浦さんはやり方次第では遠い、古いなど不利な立地でも建物、借り方、使い方に魅力があれば人は集まると確信した。だとすれば、人口減少が著しい大牟田市や北九州市をこのやり方で変えたいと考え、2年半ほど前から両市を中心に空き家を購入し、再生に取り組んでいる。 当然、旧畑田団地改め「門司港1950団地」も入居者が自分でDIYすることが基本。家賃は、最初3年間は月額1万円として2024年8月からフェイスブックなどSNSを利用して入居者を募集し始めた。
「家賃が1万円なので渋沢プロジェクトと呼んでいます。近代日本が立ち上がる時期に数多くの会社を生んだ渋沢栄一にちなみ、ここから新たに起業、創業する人たちが出てくれたら面白いだろうと考えています」と吉浦さん。 ただし、建物の躯体には問題はなさそうなものの、住戸内は3年間放置された状態。電気の点いていない、古いままの部屋は見ようによってはちょっと怖くもあり、これを全部自分でやるのかと思うとひるんでしまう人もいるだろう。
■電気、水、ガスより先にWi-Fiは使えるように それにそもそも、2024年11月半ば時点ではまだ電気、水、ガス、Wi-Fiが使える状態になっていなかった。 電気は一度1階に引き込み、そこから各戸に分配されていたようだが、団地が廃止された時点でおおもとから切断されており、再度使うためには引込から復活してもらう必要がある。水道は廃止以前に行った工事の届出が出ていなかったため、現状が把握できないとして建物全体の配管をやり直す必要があるかもしれないと言われている。
もともと風呂なしだった物件を、バルコニーを潰して浴室に改修しているため、浴室内に給湯器が置かれているのだが、現在はそのやり方はできない。換気や出火の危険などの観点から給湯器は室外に置かなくてはいけないそうで、となるとどこに置けばいいのか。 工務店に丸投げすればもっと効率的に進められるのかもしれないが、予算がないこともあり、現在は吉浦さんが1つずつ交渉に当たっている。この様子だと最初に使えるようになるのは新設することになるWi-Fiかもしれない。