佐々木弁護士は報告書の再説明を――今のままでは「第三者の目」が看板倒れ
検事時代なら怪しむはずの「事実認定」
知事の政治資金の使途などに絡み、元検事の若手弁護士とともに佐々木氏が作成した調査報告書は全62ページ。政治資金からの支出の一部に「不適切」という指摘はあるものの、すべての疑惑について「違法性はない」「違法性を帯びるものではない」と結論づけた。 最大の焦点である2013、14年1月の千葉・木更津のリゾートホテルでの「面談疑惑」については、5月時点の知事釈明では、「会議に参加したのは事務所関係者ら数人」だったのが、報告書は「出版社社長(元新聞記者)」一人との「面談」に変わり、会議(面談)時間も釈明会見では「相当な時間」だったが、2013年は「数時間程度」、14年は「1時間程度」に変遷している。 検事時代なら当然怪しむべきはずなのに、佐々木氏はそれには言及せず、「出版社長には事情は聴けていませんが、周囲の方からヒアリングしたところ事実関係の裏付けを確認できました」と述べた。加えて「これは事実認定の問題なので我々としてそう認定したということ。それを疑うことはできない、ということです」と言い切った。 6日の会見では、開始直前にいきなり配布された報告書の隅々に目を通す時間はなく、佐々木氏らが内容を説明した後の質問時間は20分程度しかなかった。知事側、佐々木氏側の言いっぱなしに終わった会見だった。
舛添知事は「弁護士に聞いてください」
「知事の説明と報告書内容が変わったことに疑問を持たなかったのか」「海外にいても携帯電話で通話できる時代なのに出版社社長からヒアリングできない理由は何か」「周囲の方とは何者か」「2年連続で奇特にも正月早々、家族旅行先まで来てくれる人物が、政治資金から支出された会食費の項目に一度も登場していないのはなぜか」――。 これらを含め、今は報告書に対して聞きたいことは山ほどある。 だが、知事にこうした内容の質問をぶつけても10日の定例会見では「報告書を作ったのは弁護士さんですから弁護士に聞いてください」「調査したのは私ではないので、聞かれても困ります」などと説明責任を投げ出したかのような発言ばかりを繰り返した。 そもそも、政治資金規正法違反(虚偽記載)に関わる「面談疑惑」については、出版社社長の「周囲の方」からのヒアリングで、「実態は家族旅行であったものの、(面談という)政治活動があったので違法とはいえない」という結論が導けるとは思えない。百歩譲って、この社長が存在し、2年連続で旅行先まで駆け付けたと仮定しても、面談場所が舛添一家の宿泊ルームではなくホテル内の喫茶店だったとした場合、喫茶代は政治活動費となっても宿泊費が該当するはずはない。面談は一家が泊まった部屋で行われなければ、「違法とは言えない」との結論は出ないはずだが、それは社長本人でしか知事の説明を裏付けられない。 知事が会見の場で、疑惑に関する説明について報告書作成者に預けるような発言をした以上、作成依頼を受けた弁護士として再び記者会見を開くべきではないか。知事の口ぶりでは、佐々木氏らは応じるはずがないと踏んでいるようにもみえるが、かつての同氏を知る者として、知事に代わって説明責任を果たしてくれることを願っている。