「“旅“を楽しむ感覚で観てほしい」映画『ココでのはなし』こささりょうま監督インタビュー。長編デビュー作への思いを語る
ゲストハウスに集う人々の交流を描いた映画『ココでのはなし』が11月8日(金)より公開中だ。今回は、本作で長編デビューとなる、こささりょうま監督にインタビューを敢行。自身がバックパッカーをしていた経験や、実在するゲストハウスの聖地toco.での撮影など、本作への思いをたっぷりとお聞きした。(取材・文:タナカシカ)
隔離を余儀なくされた人々の行き場
―――試写を拝見しゲストハウスという空間で、異なる背景を持つキャラクター同士が関わっていく姿に、現代ではあまり見られない人との繋がりの温かさを感じました。本作は、こささ監督自身がバックパッカーをされていた頃の経験が本作に活かされているとのことですが、いつ頃から構想されていたのでしょうか? 「まさに新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が出た2020年の5月6月の頃に、基となる企画を考えていていました。元々はシェアハウスの話だったんですが、シェアハウスの中で隔離ってどうやってやるのか疑問を持ったことが発端です。隔離を求められたり、『実家にも帰ることができない人の行き場ってどこにあるんだろう』ということが具体的なテーマでした」 ―――しかし、本作の舞台は緊急事態宣言の頃ではなく、東京オリンピックが開催された直後です。このように舞台背景を変更された理由を教えてください。 「ゲストハウスをテーマに据えたことで、本作は“日本向けの映画”から“海外にも届く映画”へと変わりました。緊急事態宣言の厳しさや対応は国によって異なっていましたが、舞台をゲストハウスにしたことで、海外の観客にも共感されやすい内容になったのではないかと思います。 特に、東京オリンピック・パラリンピックが無観客で開催された際、多くの日本人が複雑な感情を抱いたと思います。その思いを、日本人として記録に残すことが重要ではないかと考え、舞台背景を変更することにしました」
キャスト・スタッフで共有したゲストハウスでの時間
―――本作では、テーブルを囲むのではなく、縁側でそれぞれが好きな場所に座ったり、庭でキャッチボールをする人がいたりと、自由な環境で生まれる会話シーンが印象的でした。縁側という場所だからこそ、全員が気兼ねなく言葉を発していたのではないかと思います。このゲストハウスは、脚本が完成する前から「ぜひここを使いたい」と考えていたのでしょうか? 「東京にこんなゲストハウスがあるんだ、ということが重要だったんです。大都市の中で、こんな場所が存在することにギャップを感じ、それが魅力にも繋がっていました。だからこそ、toco.での撮影には、迷いがなかったかもしれません」 ―――toco.というゲストハウスとの出会いを教えてください。 「実は、僕がバックパッカーとして旅をしていたときの友人が、「toco.」を運営する『バックパッカーズジャパン』さんで働いていたんです。彼のおかげで、この場所とのご縁が生まれ、今回のつながりが実現しました。 撮影期間中も宿泊していましたし、みんなで劇中に出てくる筑前煮を食べながら飲んだり、朝早く起きてコーヒーを飲んだりしていました。印象に残っているのは、2段ベッドがある部屋で横になりながら話していたことですね。修学旅行みたいだなと(笑)」