アンタッチャブル柴田が絶賛「こんなアホ、初めて見た」“高学歴化”トレンドのM-1だからこそバッテリィズが愛された「生きるのに意味なんかいらんねん」
年末の風物詩となった漫才の大会『M-1グランプリ』では、毎年さまざまなドラマが生まれている。今年の大会を制したのは、前年王者の令和ロマン。史上初の連覇という偉業を成し遂げた彼らは、間違いなく今年の大会の主役である。 【貴重写真】「オードリー若林が最高点をつけたのは誰?」M-1採点一覧&「準優勝で落ち込んでる…」バッテリィズのエースなどこの記事の写真をすべて見る しかし、優勝した彼らに負けないぐらい視聴者に強烈なインパクトを残したのが、準優勝のバッテリィズだった。彼らは、決勝のファーストラウンドを1位で通過して、最終決戦では9票中3票を獲得。5票を獲得した令和ロマンには一歩及ばなかったものの、初めての決勝の舞台で大健闘を見せた。
「『にんげんだもの』で有名にならんよ!」
バッテリィズの売りは、ボケ担当のエースの明るく無邪気な「おバカキャラ」である。漫才の中では、知識がないことが原因で次々にピントが外れた受け答えをしてしまうのだが、その外れ方が絶妙で、常に受け手の想像を超えてくる。 たとえば、「偉人の名言」をテーマにした1本目の漫才では、相方の寺家に「『にんげんだもの』で有名な相田みつをっていう人がおんねん」と聞かされて、「『にんげんだもの』で人は有名にならんよ! なんやその人、俺ぐらいアホやな」と反論した。 「世界遺産」をテーマにした2本目の漫才では、スペインのサグラダ・ファミリアに行くことを勧められ、140年も建設中でまだ完成していないと知ると「なんで俺、スペインまで行って工事現場行かなあかんねん! 人足りてないから働かそうとしてるやろ!」と怒り始めた。 その後も、タージ・マハルについて「なんで俺、知らないやつの墓参り行かなあかんねん!」と不満を示し、ピラミッドも墓であると聞かされると「もうええって! 行かへんって墓参りは!」とあきれてみせた。
「こんなアホ、初めて見た」アンタ柴田が絶賛
ものを知らないということを、ここまでポジティブな形で漫才のネタに落とし込むのはそれほど容易なことではない。エースという人物がもともとそういう要素を備えているからこそ、漫才の中でも自然な形でそのキャラクターを演じられるのだろう。 審査員のアンタッチャブル・柴田英嗣は、バッテリィズについて「こんなクリティカルなアホ、初めて見た」と語った。「critial(クリティカル)」とは「批評的な/決定的な」という意味である。まさにエースの言葉の端々には、無意識のうちに物事の本質を射抜くような批評的なところがあった。これがもう1つの魅力だ。 1本目の漫才で哲学者のソクラテスの名言を紹介しようとした寺家に対して、哲学者とは何なのかと尋ねて、「物事の本質を見極めるために生きるとか死ぬとかについてずっと考えてる人たちや」と説明されると、「働けよ! 生きるか死ぬか考えんで! そんな時間あるんやったら誰かのために働いてくれよ」と言い切り、次のくだりでは「考えすぎや。その人、呼んでこい。楽しませたるわ、俺が」と続けた。 漫才の最後では「こういう偉人の言葉とか参考にせえへんかったら、人間に生まれた意味ないで」と言われて、「生きるのに意味なんか要らんねん。もうええわ」と返して締めくくった。 エースの発言は面白おかしいものとして聞こえる一方で、はからずも本質を突いていて一理あると思えたりもする。ある意味では、哲学者を批判する彼こそが誰よりも哲学者的な一面を持っている。この要素がバッテリィズの漫才に笑えるだけではない深い味わいをもたらしている。
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