護衛艦「いずも」ドローン映像は本物!? ドローンはなぜ接近できたのか、そして阻止する方法はあったのか?【自衛隊新戦力図鑑】
横須賀基地に停泊する海上自衛隊の最新鋭護衛艦「いずも」を上空から撮影したとみられる動画が今年3月、中国のSNS上に投稿された。あまりに無防備な状況からフェイク説も出たが、5月9日に防衛省は動画が本物である可能性が高いとする調査結果を発表した。なぜこのような事態が発生したのだろうか? そして、どのような危険があり、どのような対抗手段が考えられるのだろうか? TEXT:綾部剛之(AYABE Takayuki)
なぜドローンは護衛艦に接近できたのか?
今回の映像は中国の民間人が興味本位で撮影したもので、市販のホビードローンが使用されたようだ。ホビードローンはインターネットで買える「オモチャ」であり、いってみれば「ラジコン」だ。では、そんなオモチャ程度の機械が、なぜ最新鋭護衛艦に接近できたのだろうか? 多くの人が、まず考えるのは「レーダーで発見できなかったのか?」ということだろう。だが、基本的に停泊中の艦艇はレーダーを作動させておらず、海上自衛隊の基地にも対空レーダーは存在しない。レーダーが周辺に電波障害などを生じるという問題もあるが、これまで想定されてきた「空からの脅威」がミサイルや航空機であり、日本本土に接近する前に航空自衛隊のレーダーサイトなどで探知できるものだからだ。 そもそも既存のレーダーは有人航空機など、ある程度の大きさのものを想定しており、小型のドローンは鳥などと区別がつかない可能性がある。そのため、近年では速度変化などから鳥とドローンを識別できる専用レーダーが開発されている。また、ホビードローンには必ず操縦者が存在するため、操縦者との無線通信を探知することで、ドローンの接近を察知する方法もある。なお、レーダー以外の方法、音や目視での監視についてだが、一般の航空機・ヘリコプターより、はるかに小型で飛行音も小さく、気付きにくいことは間違いない。
ドローンの攻撃力
次に危険性についてだが、直接的な攻撃力は決して大きくはない。ホビードローンが搭載できるペイロード(輸送量)は限られているため、大きな爆弾は持ち運べないからだ。長距離ミサイルや航空機搭載の爆弾のような破壊力には遠くおよばない。 一方で、現在も続くウクライナ戦争では小型の対戦車弾頭や迫撃砲弾を抱えた「自爆ドローン」が対人・対車両で猛威を振るっており、小規模ながら攻撃力は持っている。また、生物・化学兵器を搭載した場合は小さなペイロードでも大きな被害を招くだろう。