「ストリートライブ1000回」が目標の女子高生だった川嶋あい。全国各地の卒業式でのサプライズライブがくれたもの「宮城県石巻市の中学校では…」
石巻市のたった5人の卒業生へのライブ
――そもそも、サプライズライブは在校生など学校関係者から依頼があって、そこから学校を選ぶ流れなのでしょうか? はい。生徒さんやその保護者の方や先生方などから応募があり、いずれも「ぜひサプライズライブに来てください」という、あふれんばかりの熱意が込められたメッセージばかりです。毎回すべて自分で読んでいるのですが、悩みに悩んで「これは自分が行かなきゃ!」と思った学校を選んでいます。 ――熱意を持ってオファーしている学校ばかりなので、サプライズライブの光景は川嶋さんにとっても、その場にいる人たちにとっても記憶に刻まれる瞬間の連続だと思います。ただ、その中でも特に印象深かった卒業ライブはありますか? 毎回、どの学校の卒業式も空気感が異なるため、新鮮な気持ちで楽しませてもらっています。もちろん、どのサプライズライブも記憶に残っていますが、2018年、宮城県・石巻市にある雄勝中学校でのサプライズライブは特に印象的でした。 ――その理由は? 東日本大震災の爪痕が依然として大きく残っている地域で、全校生徒の数はとても少なく卒業生は5人だけ。卒業生が5人だったので、歌っている最中にひとりひとりの表情がよく見えて、その表情からどんな学校生活を送ってきたのかを想像してグッときました。 ――いろいろな物語が想像できそうですね。 卒業生同士もそうですが、下級生たちも卒業生との別れを惜しんでいたんですね。生徒数が少ない分お姉ちゃんのように慕われていた卒業生が、別れを悲しそうにしている後輩たちにやさしく気さくに接している姿を見て、より深く胸に刺さりました。
心動かされる手紙
――生徒の数が少ないほうが印象的なライブになりやすい気もします。 いえいえ、生徒数が多い学校でも記憶に残るライブはあります。千葉県の中学校でサプライズライブさせていただいたことがあるのですが、登場したときは大盛り上がりを見せ、その熱気に驚かされました。 ――学校ごとに本当にリアクションが異なるのですね。 千葉県の中学校は盛り上がってくれたのですが、『旅立ちの日に…』を歌っているときにはしっかり耳を傾けてくれて、最後は涙を流している生徒もいました。そのギャップがとても印象的でした。学校によってリアクションが異なるので、そこも楽しみの一つと考えています。 ――サプライズライブに参加していたかつての卒業生から声が届くこともあるそうですね。 はい、基本的にはファンレターでいただくことが多いです。「あのときはありがとうございました」「あのとき歌ってくれた楽曲を思い出して救われました」という内容の手紙をいただくと、本当にこれまでの音楽活動をすべて肯定できるような気持ちになります。 ――それは喜びもひとしおですね。 私も感謝の気持ちでいっぱいになりますが、シングル曲ではなくアルバムに収録されたあまり日の目を浴びていない楽曲に触れる手紙も珍しくないことがうれしいです。なおさら「サプライズライブをやってよかった」という気持ちになります。 取材・文/望月悠木 撮影/石垣星児