トヨタとNTTが目指す「交通事故ゼロ社会」、高速データ通信・AI基盤のコストは誰がどう負担する?
トヨタ自動車とNTTが、「交通事故ゼロ社会」の実現を目指す「モビリティAI基盤」の構築で合意した。NTTグループが開発を進める次世代通信基盤「IOWN」などを活用する。だが、5000億円という巨額の投資をどのように回収するのか。そして、ユーザーの負担はどうなるのか。 【図】トヨタとNTTが実現を目指す「交通事故ゼロ社会」。インフラコストの負担はどうなる? (桃田 健史:自動車ジャーナリスト) トヨタ自動車とNTTは10月31日、交通事故ゼロ社会の実現に向けて、モビリティ分野におけるAI・通信の共同取り組みに合意したと発表した。具体的には「モビリティAI基盤」を新たに構築するため、両社で2030年までに総額5000億円規模の投資を行う。 筆者は都内で開催された記者会見に出向き、両社長に直接質問するなどして、大筋では事業の方向性は理解した。だが、現時点では事業の落とし所について不明な部分があると感じた。 キーポイントは、ユーザーのコスト負担についてだ。 まず、トヨタとNTTとの関係について振り返ってみたい。 7年前の2017年、両社はデータ処理基盤などの技術開発で協業を始めた。当時は、自動車産業界では「CASE」と呼ばれる技術とサービスにおける新しい分野が注目され始めたころだ。 CASEとは、ドイツのメルセデス・ベンツ(当時のダイムラー)が次世代に向けた量産開発に対するマーケティング用語。Cは通信によるコネクテッド。Aは自動運転技術、Sはシェアリングエコノミーにおける新サービス領域、そしてEは電動化を指す。 このうち、コネクテッドについては、クルマ同士が通信する車々間通信(V2V)、クルマと道路側の機器が通信する路車間通信(V2I)、クルマと歩行者が通信する歩車間通信(V2P) といった区分けがある。これらの総称としてV2Xともいう。 また、クルマと家が電力や通信でつながることをV2Hと呼ぶ。 こうした各種通信におけるデータ処理基盤に関する協議を両社で進める中で、2020年にはクルマ単体ではなくクルマを含む社会全体へと視野を広げるとの観点から、スマートシティの基盤づくりを目指す業務資本提携を結んでいる。NTTとしては、自社開発する近未来のスマート世界を支えるコミュニケーション基盤「IOWN(アイオン:Innovative Optical and Wireless Network)を活用するとした。 また、トヨタは同年1月、米ラスベガスで開催されたITと家電の国際見本市「CES2020」で、コネクテッド・シティを具現化する「ウーブンシティ」を静岡県裾野市の工場跡地に建設することを明らかにした。 ウーブンシティは現在、主要な建物がかなり完成している段階で近年中に街としての機能が稼働するものと考えられる。 今回の会見では、2025年以降にモビリティAI基盤の開発をスタートさせ、2028年頃から様々なパートナーと三位一体でのインフラ協調による社会実装を始めるとしている。その中で、ウーブンシティの活用はあり得るという考えを示した。 では、モビリティAI基盤とは具体的にどのようなものなのか?