Official髭男dism、新曲「SOULSOUP」も5分超え 長尺を聴かせる楽曲構成の妙
新曲「SOULSOUP」で見せた「溜め」の妙味
■新曲「SOULSOUP」で見せた「溜め」の妙味 最後に、2023年12月22日に公開された映画『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』の主題歌、「SOULSOUP」について触れていこう。曲全体の尺は5分とやや長めで、最初のサビまでに1分50秒もある。しかしながら、先ほどまで述べた楽曲とは違った形式の楽曲構成の妙があり聴き手を飽きさせないものとなっている。 タイトルからも明らかなようにソウルミュージックを意識したこの楽曲は、カーティス・メイフィールド「Move On Up」を髣髴とさせるホーンセクションによる華やかなイントロと、それを土台に変形させた勢いのあるAメロを繰り返す。この比較的共通したメロディを反復することによって、ソウルをはじめとするブラックミュージックの持つ「繰り返しによって生まれる高揚感」に近い感覚を聴き手に与えている。また、悩みや葛藤という要素が強い歌詞と相まって、「Pretender」や「ホワイトノイズ」とはまた違う「溜め」の妙味が生まれているのだ。Bメロからサビまでの展開も実に見事。急激にテンションが上がる印象はなく、流れるような勢いが維持されたままだ。総じて、5分という尺の中で一定のテンションを維持しつつも、楽曲が進むにつれて盛り上がり続けるような感覚があるのは、ブラックミュージック影響下のJ-POPとして理想形のひとつと言えるだろう。 ヒゲダンが現在の音楽シーンの主流とは外れた長尺の楽曲をヒットさせているのは、それぞれの曲の長さに意味があり、それらが効果的に作用することでリスナーが飽きることなく聴き続けられているからだと言える。もはや他アーティストに影響を与える立場となったと言っても過言ではない、今後の彼らの動向から目が離せない。 ※1 https://twitter.com/daisuke_higedan/status/1612832362051817472
杉並クナイ