劇団四季の再演リクエスト1位「ウィキッド」 魔女たちの青春物語に込められたメッセージ
劇団四季のミュージカル「ウィキッド-誰も知らない、もう一つのオズの物語-」が大阪市北区の大阪四季劇場で上演されている(令和7来年7月6日まで)。大阪では15年ぶりとなる同作だが、再演のリクエストが最も多かったのだという。少女、ドロシーの冒険物語「オズの魔法使い」の前日譚である同作は、何が心を引きつけるのか。 ■「オズの魔法使い」への疑問 劇場に入ると、そこはもう「オズの国」が広がっていた。舞台の緞帳(どんちょう)は中央でキラキラと輝くエメラルドシティーへの地図になっている。羽の生えた猿がその緞帳を上げると、いよいよ物語が始まる。 生まれつき肌の色が緑で偏見の中で育ったエルファバと、人気者になりたいといちずに思うちょっと能天気なグリンダ。性格の違う2人の女の子が寮の同部屋になり、反発しながらも徐々に友情を築いていく。そこにエルファバの秘めた魔力を使い、オズの動物たちから言葉を奪おうともくろむ国家の影が差し―。 物語は「オズの魔法使い」に登場する「善い魔女」のグリンダと、「西の悪い魔女」のエルファバが、魔法使いを目指している大学生だった頃を描く。原作はグレゴリー・マグワイアが1995年に発表した同名の小説だ。 マグワイアは子供の頃に読んだ「オズの魔法使い」に疑問を感じていたという。なぜ、魔法使いはドロシーに西の魔女を倒すように命じたのか。なぜ善い魔女はもっと早く、簡単に故郷に帰れる方法を教えてあげなかったのか。 「ウィキッド」はそうした疑問に答えるとともに、脳を欲しがるかかし、勇気を求めるライオン、心をなくしたブリキの木こりといったキャラクターたちが登場する謎をも、魔法のように氷解させてくれる。 ■湧き上がるさまざまな感情 抵抗するエルファバを「悪い魔女」に仕立てようとする国家に立ち向かうエルファバが歌う「自由を求めて」の力強さに心を揺さぶられ、女性同士の友情に、複雑に絡み合う恋愛に…。物語を見終わるといろんな感情が湧き上がってくる。 「そこがこのウィキッドの素晴らしさ」と話すのは劇団四季の吉田智誉樹社長。「見終わったときに考えさせられる要素が多く、それが再演リクエストの多い、一番の理由だと思います。物語のどこを切り取っても楽しめ、お客さまの心を捉えるんです」