職員が市役所から飛び降り死、1審で5785万円賠償命じられた市の控訴案を議会が否決
甲府市の男性職員が自殺したのは、過度な長時間勤務が原因などとして、遺族が市に損害賠償を求めた訴訟を巡り、市に賠償を命じた甲府地裁判決について、甲府市の樋口雄一市長は1日、東京高裁への控訴を断念する意向を明らかにした。この日、臨時市議会に控訴を求める議案を提出したが、多数の市議が「司法判断が覆るとは考えられない」などと反対し、否決された。 【写真】飛び降り自殺が起きた甲府市役所
訴訟では、2020年1月に甲府市事務効率課職員だった男性(当時42歳)が市役所から飛び降り自殺したのは市が勤務時間を適切に把握せず、過度な長時間勤務が原因として、遺族が22年、市に損害賠償を求め提訴。地裁は10月22日、市の安全配慮義務違反を認定したうえで、長時間労働と自殺の因果関係を認め、市側に約5785万円の支払いを命じていた。
市は地裁判決を不服として、控訴を求める議案などを1日の臨時会本会議に提出。樋口市長は「第一審の判決には、市が主張していた当時の勤務状況、職場環境に関する実態が反映されていないこと、ならびにその理由が明確に示されていない」と提案理由を説明した。
しかし、議員からは「原告の主張に対応する形で市の主張も検討されている」、「新たな証拠がないままに司法判断が覆るとは考えられない」などと反対意見が相次ぎ、本会議の採決では賛成11、反対20で否決された。
閉会後、樋口市長は報道陣に対し、「議会での否決という結果を重く受け止め、甲府地方裁判所の判決に従った対応をしっかり進めていきたいというふうに思っている」と述べ、控訴断念の意向を示した。
議会に出席した男性の父(77)は「当局側から出た原案が否決というのは大変まれなケースだと思っている。それをやってくださった議会の先生方には心からお礼を申し上げたい」と話した。