『容疑者 室井慎次』に登場する個性的な新キャラクターたち

　『踊る』シリーズと言えば個性的なキャラクターたちも魅力のひとつだが、本作においても個性的な新キャラクターたちが登場する。特にヴィランである弁護士・灰島秀樹を中心とした灰島弁護士事務所の面々は強烈だ。シニカルで人の体温を感じさせない、冷酷な弁護士団の姿には背筋が凍るような気持ちになる。八嶋智人演じる灰島もさながら、特に松永玲子演じる河野脇子は劇場版『踊る大捜査線 THE MOVIE』にて小泉今日子が演じ、『敗れざる者』『生き続ける者』でも重要な存在となる日向真奈美を彷彿とさせる狂気を感じさせる。事件の捜査本部が設置された新宿北署の巡査部長であり、室井と共に事件の真相を追う工藤を演じるのは哀川翔。哀川は元々音楽ユニット・一世風靡セピアにて、室井を演じる柳葉敏郎と共に活動していたこともあり、親交の深いふたりだからこその息のあったやりとりにも注目だ。また『踊る』シリーズ本編からも真矢みき（現：真矢ミキ）演じる沖田仁美や筧利夫演じる新城賢太郎、さらには青島が働く湾岸署の名物キャラクターであるスリーアミーゴスも登場し、それぞれの形で室井をサポートする。 　なによりも注目してほしいのは、本作で明かされる室井のパーソナルな過去だろう。普段の『踊る』シリーズでは青島たち現場の捜査員と組織上層部の間で板挟みとなりもがきながらも自身の考える正義を遂行しようとする室井の姿がフォーカスされ、室井の私的な情報や過去が掘り下げられることは極めて稀であった。そういった意味でも本作はやはり『踊る』シリーズにおける異色作なのだ。本作で明かされるのは室井の学生時代、そして当時の恋人との切なく、重たい過去だ。室井の過去とは。そして事件の真実とは。 　『敗れざる者』『生き続ける者』にも連なるであろうストーリーが展開される『容疑者 室井慎次』。ぜひテレビ放送をチェックして2部作の公開に備えてほしい。