「もしトラ」に備える ~「トランプ前政権時」に日米長期金利とドル円はどう動いたか【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】
※本稿は、チーフマーケットストラテジスト・市川雅浩氏(三井住友DSアセットマネジメント株式会社)による寄稿です。
●2016年は年末にかけ長期金利上昇でドル高、2017年は長期金利横ばいもリスクオンでドル安。 ●2018年は米中対立でリスクオフの円高、2019年は米国が利下げに転じ長期金利低下でドル安。 ●2020年も同じ傾向、選挙後の金利と為替は経済対策や米中関係、金融政策が重要な要素に。
2016年は年末にかけ長期金利上昇でドル高、2017年は長期金利横ばいもリスクオンでドル安
3月11日付レポート では、トランプ政権時代の米国株の推移を検証しましたが、今回は日米長期金利とドル円の動きを確認します。2016年11月8日の米大統領選挙でトランプ氏が勝利すると、大規模減税への期待から、市場では「トランプ・ラリー」と呼ばれる現象が発生しました。年末にかけて株価が世界的に上昇し、10年国債利回りは日米ともに上昇、為替市場では米ドルがほぼ全面高となり、ドル円はドル高・円安方向に振れました(図表)。 2017年の政権1年目では、税制改革の推進により、米国株の堅調推移が続き、為替市場でもリスクオン(選好)の米ドル売りが優勢となりました。米連邦準備制度理事会(FRB)はこの年、3回の追加利上げを実施し、バランスシート縮小も開始しましたが、米10年国債利回りの反応は限定的で、日本の10年国債利回りもおおむね横ばい推移となり、ドル円は年間で4円27銭ほどドル安・円高が進みました。
2018年は米中対立でリスクオフの円高、2019年は米国が利下げに転じ長期金利低下でドル安
2018年の政権2年目において、トランプ氏が通商政策で対中強硬姿勢を鮮明にすると、米中貿易摩擦問題を嫌気して米国株は軒並み下落に転じました。為替市場でもリスクオフ(回避)の動きが強まり、日本円、次いで米ドルが対主要通貨で買われ、ドル円は年間で3円ほどドル安・円高が進行しました。米10年国債利回りは、FRBがこの年、4回の追加利上げを実施したことなどから上昇し、一時3.2%台をつける場面もみられました。 2019年の政権3年目、トランプ氏は中国製品に対する制裁関税を段階的に強化し、米中貿易摩擦問題は一段と深刻化しました。FRBは、貿易問題を巡る不確実性を重視し、7月以降、3会合連続で利下げに踏み切り、バランスシートの縮小を9月に終えました。FRBの政策がハト派方向に転じたことで、米国株は大幅高となった一方、米10年国債利回りは低下傾向をたどり、ドル円はドル安・円高に振れましたが、年間では1円8銭程度でした。
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