“医師をだますのはちょろい!”…「エリート勤務医」が不動産会社にカモにされるケースが急増した訳
頭はいいはずなのになぜ?「悪徳不動産業者が医師を狙う」理由
’24年4月に医師の働き方改革が断行され、勤務医の金脈だった、非常勤の医師として医療機関に勤務する「アルバイト」が制限されることになった。 医業停止の行政処分を受けた「わいせつ犯医師」が小児科医として医療現場へ復帰するヤバイ現実 日本最大級の医療従事者専用サイトである『m3.com』によると、その影響で3割程度の医師の収入が減少。以前のような収入を求めて株や不動産などの投資に手を出す勤務医が増えている。 そんな状況にある医師なのだが、なかには投資に失敗して赤字を背負い、返済資金に奔走している者もいるのだという。頭がいいはずの医師たちが、なぜそのような苦境に立たされているのか。都内在住の内科医であるT氏に話を聞くと、意外な答えが返ってきた。 「医師が受ける投資話のほとんどが不動産なのですが、医師向け不動産投資の物件は、相場と大きく乖離した価値の物件が多いんです。私自身、800万円相当の物件を1500万で買わされそうになりました。 昨年9月にも医師への不動産投資について、600万円相当の案件を1080万円で販売していたケースが東京地裁で争われました。 医師の多くは世間知らずで、そういった点を狙う悪質な不動産会社が増えているので、このような状況になっているのでしょう」 医師を狙う不動産会社は、「多額の収入への節税効果」などを謳い文句に勧誘を行うという。方法も多種多様になっており、医師の学会でブースに紛れ込んで、参加者に片っ端から営業をかけるという悪質な業者もいるのだという。 ただ、少し調べれば、営業されている物件が相場の1.5倍~2倍の値段であることはすぐにわかりそうなものだが、なぜ騙されてしまう医師が後を絶たないのだろうか。T氏は「同じ医師として恥ずかしいことですが……」と言いながらこう続ける。 「医師は、国家試験に合格して研修医になった時から『先生』と呼ばれます。合コンや同窓会でも医師というだけでちやほやされることが多いのも事実です。そのせいか、人にアドバイスを求めることができなくなる人も少なくありません。 マネーリテラシーが一切ない状況にもかかわらず『不労所得』『保険』『節税』などの甘言に騙され、さらにプライドの高さから人に相談できなくなったりしてしまうんです。購入後も『〇〇先生は4部屋持っていますよ』とプライドをくすぐられるとすぐに手を出してしまうことも多いです。不動産会社からしたら、ちょろいカモなんでしょう」 T氏は医師をねらう不動産業者に誘惑されて複数の物件を購入したものの、売却することができず、破産することになってしまったというX氏の事例を紹介してくれた。 ◆医師が「不動産投資で破滅」してしまうのはなぜなのか X氏は、首都圏の私立大学卒で内科医の40代男性だ。内科医の平均年収が1200万円と言われるなか、講演や非常勤勤務などの「アルバイト」に精を出していたものの、年収は1800万円ほどで頭打ちになっていた。医師の働き方改革の影響もあって仕事をこれ以上増やせないのだ。 X氏は、子ども3人を私立の小中一貫校に通わせていたため、年間600万円の学費が必要となっていた。これから大学まで行かせることを考えると、1800万円の年収では不安になったX氏は、不動産投資に手を出すことにしたのだという。 不動産会社に連絡したところ、やってきた営業マンに「物件をローンで購入して、毎月の賃料を支払いに充てれば、先生の確定申告も楽になり、もしもの時の保険になりますよ」などとアプローチされた結果、都内の駅前3分のワンルームマンションを2800万円で購入したのだという。 1年目は確定申告で18万円、2年目には8万円の控除しか受けられなかった。これでは効果が薄いと感じたX氏は、話が違うと営業マンを問い詰めた。 しかし、その様子を見た営業マンは、今年も物件を購入すればまた節税できますよとアドバイス。半信半疑だったがX氏だが、「同じ病院のZ先生は4部屋買っていますよ」と煽られ、さらに物件を購入。4件目の購入をした時には借金の合計が1億3000万円になっていたという。 そうなってしまっては、家賃収入や医師としての収入だけでローンを返済することができない。購入した物件は相場よりもはるかに高額で、売却することもできなかった。騙されたとして裁判を起こすにも非常に長い時間がかかってしまうため、破産せざるを得なくなってしまったのだという。 このような、世間知らずの医師を狙った投資の勧誘は増えている。より多くの収入を求める心理は理解できなくもないが、医師に求められている役割を思い出してほしいものだ。 取材・文:内科医TT
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