異例挑戦!高橋大輔のアイスダンス転向は成功するのか?
日本スケート連盟は26日、フィギュアスケートの2010年バンクーバー五輪男子シングルス銅メダルで、昨シーズンから現役復帰した高橋大輔(33、関大KFSC)がアイスダンスに転向することを発表した。2018年平昌五輪アイスダンス代表で15位だった村元哉中(26)とカップルを組み、2020年1月から米国に本拠地を移し、アイスダンスの指導者として超一流のマリーナ・ズエワ氏をヘッドコーチに招きトレーニングをスタートさせ、競技会出場を目指す。高橋のシングルの競技会出場はシード権を得ている12月の全日本選手権が最後になる。 村元のツイッターなどによると、平昌五輪に出場した際に組んでいたクリス・リードとのカップルを解消し、相手を探していた村元が、今年1月に高橋に打診したのが発端。2人は、7月に行われたアイスショーの「氷艶hyoen2019 -月光かりの如く-」で共演している仲でもあり、トライアウトを重ねながら今回の決断に至ったという。 全日本3連覇している村元は、日本スケート連盟のホームページに「この度、高橋大輔選手と新しい挑戦が出来ることを大変嬉しく思います。一歩一歩力強く進んでいきたいと思います。今後とも応援の程、よろしくお願い致します」とコメントした。 一方の高橋は、「2020年から村元哉中選手とカップルを組み競技会に向けて新しい挑戦が始まります。更なる高みを目指し頑張ります。まずは全日本選手権での男子シングルの最後の演技に向けベストを目指していきます。今後とも応援の程、よろしくお願い致します」とのコメントを寄せ、この日、テレビ番組に出演した際には、村元とのカップルでアイスダンスで2022年の北京五輪出場を狙う考えであることを明らかにした。 フィギュア関係者には、大きな驚きと衝撃を与えた異例の転向で、その成否については、「未知数」と捉える声も少なくない。
「氷上の社交ダンス」とも言われるアイスダンスは、男女のカップルで、音楽に合わせ、ステップやリフトなどで得点を競うもので、ショートダンスとフリーダンスの2種目が行われ、男女が別々にスピンを行うソロスピン、1回転半を超えるジャンプ、男女が離れて演技することなどが禁止されている。 使用されるシューズも、ジャンプがないためフィギュアシングルとはまったく違うブレードの短いものが使用され、競技中に必要とされる、エッジの角度なども大きく異なるため、「これまで出場していたシングルとは、同じアイススケートだが、野球とクリケットくらい違う競技だ」と言われている。 ただ高度なジャンプやスピンなどがないため、競技寿命は長く、33歳となる高橋の年齢からくるハンディは軽減される。 また五輪に関しては、出場選手の国籍が条件とされており、世界で通用するカップルが、少ないなど選手層が薄いのが日本の現状。強化選手として指名されているのは、小松原美里(27、倉敷FSC)と、ティム・コレト(28、米国)の“夫婦カップル“だけで選手層が薄く高橋と村元カップルがいきなり日本のトップレベルに浮上してくる可能性も十分にある。 関係者の一人は、「アイスダンスはスピード感のあるステップワークがカギだから高橋選手のスタイルは合っているのかもしれない。しかも、ダンスや舞台などに興味を抱き、表現力に定評のあった高橋選手だから芸術性を争うアイスダンスに適応できる可能性を感じる。ズエワ氏は、アイスダンスでは第一人者の指導者。トレーニングの効果も期待できる。現時点での成否はもちろん未知数ではあるが、可能性のある挑戦」という感想を口にしていた。 元五輪メダリストの異例の転向には、海外メディアも注目しており、オリンピック・チャンネルは、「高橋が村元と新たにフィギュアスケートチームを結成、日本のアイススケートのスター選手たちが北京の2022年冬季五輪の2年前にして『トップに立つこと』を目指す」との見出しを取って報じている。記事は、2014年に引退した高橋が、昨年競技に復帰して全日本で宇野昌磨に次いで2位に入っていること、村元が、アイスダンスのスペシャリストで、クリス・リードを前パートナーに2018年の四大陸選手権で銅メダル、2017年のアジア大会で銀メダルを獲得し、2018年の平昌五輪にも出場していることを紹介している。 いずれにしろシングルのトップ選手がアイスダンスに挑戦するのは、超異例の挑戦。高橋は昨シーズン現役復帰を果たして大きな話題を呼んだが、今回の転向は、これまで注目度が薄かったアイスダンスにスポットライトを当てることになり、日本のアイススケート界にとっても意義の大きい挑戦になりそうだ。