日本は憲法上「核兵器の保有」は認められないのか?
「非核三原則」と「NPT条約」との整合性
しかし、核兵器が禁止されているかいなかについては、さらに次の2つの点を勘案する必要があります。 一つは、日本は、戦後米国の統治下におかれていた小笠原諸島と沖縄が本土に復帰するに際に(それぞれ1968年、72年)、「核を持たず、作らず、持ち込ませず」の非核三原則を表明したことです。 つまり、核兵器は、日本国憲法では必ずしも禁止されていませんが、日本の政策として「核を持たず、作らず、持ち込ませず」と決めたのです。憲法は一定の場合に可能と言っているだけで、核兵器を保有、使用しないという政策は憲法となんら矛盾しません。 もう一つは、日本は、沖縄返還から4年後の1976年に批准した核兵器不拡散条約(NPT)で、核兵器の保有、使用など一切のことが国際法上、禁止されていることです。この禁止がある限り、日本国憲法では禁止されていないと言っても実際上意味はありません。
「NPT」について不明確な国会答弁
以上、核兵器が禁止されているか否かを判断する場合に日本国憲法、非核三原則およびNPTの三つが問題になることは、従来の国会答弁でもちろん指摘されていますが、その説明ぶりが適切かについては再検討の余地があると思われます。 特に、NPTについては、憲法や非核三原則に比べ、説明が不明確な時がありました。その一例がさる3月18日の参議院予算委員会での答弁です。法制局長官は、「核兵器を始め全ての武器の使用についての制約というのは、国内法、国際法それぞれございます」と言いつつ、「武力の行使が可能となるのは、新三要件の下におきましても、我が国を防衛するための必要最小限度のものでございます」と説明しました。 しかし、NPT条約に加盟している以上、核兵器に関する限り、自衛であろうとなかろうと、また新三要件を満たそうと否とは関係なく禁止されています。 法制局長官の説明は憲法との関係だけに限ったものかもしれませんが、誤解を生みやすく、今後は「法的にも使用、保有などできない」ことを強調し、明確に説明するべきではないでしょうか。
--------------------------- ■美根慶樹(みね・よしき) 平和外交研究所代表。1968年外務省入省。中国関係、北朝鮮関係、国連、軍縮などの分野が多く、在ユーゴスラビア連邦大使、地球環境問題担当大使、アフガニスン支援担当大使、軍縮代表部大使、日朝国交正常化交渉日本政府代表などを務めた。2009年退官。2014年までキヤノングローバル戦略研究所研究主幹