「プロとして恥ずかしくないのか」帝王・山田裕仁氏が伊東競輪G3決勝レースを酷評
そして最終3コーナー。勝負どころで少し離れてしまった萩原選手が、必死に食らいついて岡村選手の後ろに復帰。外から捲りにいった吉田選手は伸びがなく、岩本選手や岡村選手と変わらない脚色になってしまっています。こうなると、優勝争いは終始レースを支配した南関東勢のもの。先頭の岩本選手は余力十分のままで最終2センターを回って、最後の直線に入りました。 最終4コーナーでグッと伸びて、後続を少し突き放した岩本選手。それを岡村選手が追いすがりますが、差がまったく詰まりません。そこに吉田選手が外からジリジリと脚を伸ばしてきますが、これは岡村選手を捉えられるかどうか。大勢は決して、力強く抜け出した岩本選手がそのまま先頭でゴールイン。これで通算5回目となるGIII優勝を、完全Vで決めてみせました。 2着は岩本選手マークの岡村選手で、中団から捲った吉田選手は3着まで。南関東ライン4番手の萩原選手が4着、自力に切り替えて捲った神山選手が5着という結果です。後方となった川口選手は、何の存在感も発揮できないまま。レース前に誰もが予想したとおりの展開となり、3連単は2番人気の1,030円という堅い決着となりました。岩本選手からの車券で勝負していた人は、安心して観ていられたでしょうね。 多くの方が車券を当てて喜ばれたのはいいとして… 皆さん率直なところ、このレースを「面白い」「楽しい」と感じられましたか? 私は残念ながら、まったく感じませんでした。南関東勢が主導権を奪って二段駆けに持ち込もうとするのが、誰の目にも明らかなメンバー構成。そのシナリオ通りになれば、他のラインはなすすべなく終わってしまうのもミエミエでした。
「できなかった」ではなく「しなかった」ことが問題
ならば、南関東勢をのぞく5名の選手は自分の優勝のためにも、その目論見を阻むべく最大限の努力をする義務がある。しかし実際はどうだったかといえば…誰も何もしなかった。「できなかった」ではなく「しなかった」のが問題で、これが勝つために最善を尽くした結果だというならば、はっきりいってプロ失格ですよ。こんなレースをお客さんにみせて、プロとして、競技者として恥ずかしくないのかと私は言いたい。 こういう場合、ラインの先頭を任された選手に矛先が向きがちですが、作戦というのはライン全体で決めるもの。つまり、吉田選手や川口選手が悪かったわけではなく、南関東勢をのぞく5名全体の責任です。立ち向かうのを諦めてしまうほど能力差があったわけでもないのに、なぜこんな不甲斐ないレースをしてしまったのか…。記念ではないとはいえ、これはれっきとしたグレードレースの決勝戦なんですよ!? もしかすると、南関東勢に対抗するためにやるべきことをやり尽くしたとしても、結果はほとんど変わらなかったかもしれません。しかしこの場合、そこに至るまでの過程がまったく違いますよね。私が問うているのは……そしておそらく、競輪を愛してくださっている多くのファンが求めているものも、その結果に至るまでの「過程」がエキサイティングなものであるかどうか。そういう観点から考えるに、この決勝戦は最低です。 このところの記念で見応えのある決勝戦が続いていたので、なおさら落胆が大きいというのもあります。それに、決勝戦が「初日特選のリプレイ」になったのも残念でした。同一開催で同じ展開になって負けるというのは、プロとして恥ずかしい。先週の松山記念で古性優作選手(100期=大阪・33歳)がみせた走りとは正反対で、古性選手は失敗を繰り返さなかった。これこそが、プロのあるべき姿なのです。