ディーン・フジオカの背中を押すもの「生きていくためにやってきたことが、自分の命題のようになっている」
手加減なしにみんなで世界感を作り上げている
一方、物語については最先端科学にまつわる不可解な事件、というだけあって、毎回、ハラハラするような展開が待ち受けている本作。スピード感あるストーリーに一気に引きこまれたことは記憶に新しい。それだけにSeason3での展開も気になるところだ。 「Season2で、配信だからこそできる描写というものに味をしめたというか(笑)。羽住(英一郎)監督を筆頭に、フルスイングでやっているな、と思います。最先端の科学技術を使った事件を解決していく上での描写だったり、説得力が必要な部分において、本当に手加減なしにみんなで世界感を作り上げていって……。もっととんでもないスレスレのことがこの先にあるんじゃないか、ほかには何ができるんだろう、と考えるのが楽しみなぐらいの制作能力の高さです」 こと、羽住監督を始めとした制作のことに話が及ぶと、ディーンはより饒舌になる。 「羽住組ってオペレーションの精度の高さというものがすごいんですよ。そういう特番があったら、いくらでも話ができるぐらいです。今回もSeason1、2に比べてさらに制作体制もアップデートされていて。以前まではチーフの撮影技師さんが自分でカメラ構えて撮ってるような形だったんですけど、今回からはインターナショナルナスタンダードでモニターを見ながら、シューターは別の方々がいて……という形だったり、とにかくすごい。作品の中身もそうなんですが、常にどうやったら制作体制のアップデートができるか、というところを突き詰めている姿がこの作品の魅力にも繋がってるんじゃないかなと思いますね。そういう面でこの作品をフィーチャーする、魅力を紹介する角度もあるんじゃないかな、というぐらいの機材だとか、プリプロと撮影と、ポスプロのシームレスな組み方だとか、すごく興味深いですね」
挑戦を続けるディーン・フジオカの軸になっているもの
『バンドラの果実』はSeason3へ。ディーンとしては最も長い作品となってくる。 しかし、だからと言ってディーンのイメージが固定されることはない。むしろ、既存のイメージにとらわれない役柄にも挑戦し、ミュージシャン、また映画プロデューサーとしても活躍は幅広い。むしろひとつイメージを挙げるとしたら「挑戦を続ける人」だ。 「今まで『新人』と言われたことは4回ほど……いや、考え方によってはもっとかもしれないですね。国を変えてきたり、言語圏を変えたり。同じ言語圏にいたとしても、俳優もあれば、映画監督やプロデューサー、音楽なら歌うこと、曲を作ること、プロデュースすること、と、世界との向き合い方が変わります。そうやって、新しい自分の在り方や、世界との関わり方を続けてこざるを得なかったんです」 それは、サバイバルだ、と続ける。「今、改めて振り返ると、生きていくためにやってきたことが、自分の命題のようになっているのかな、と」。 「生きていくために必要なことをやらざるを得なかったから、その結果、いろんな経験、視点というのかな……自分の中でも、ときに相反するような価値観が同時に存在するようになりました。それが、今、自分が新しいことを挑戦しようとなったときに背中を押してくれています。 今回のように、ひとつの役として自分の居場所を作ってくださる関係者の方だったりとか、その辺はある意味、需要と供給のバランスがあると思うんですよ。どちらか片方だと、やっぱり不具合が出てくるし、成立しません。だからこそ、自分が新しいことへの挑戦に対して常にオープンでいられるし、新しいことに挑戦する機会もいただけていると思います」 しかし、一方で経験が増え、成功体験も増えると、失敗を恐れ、挑戦ができなくなってしまう人も多い。その点についてはどのように向き合っているのかと問うと、「いやあ、それは僕も知りたいです」と柔和な笑みを浮かべた。 「なんでもかんでも挑戦できるとも思わないし、やっぱり結果を出さないとそのツケが絶対に自分に返ってきます。だから、決して能天気でいられないですよね」 そう言ったあと、「……難しいですね」と少し思案するような表情を見せる。 「どれだけ楽しめるかだと思うんですよね。あとは続けていければ、自分の能力も上がっていくと思うし、経験値も増えて、向き合い方にも柔軟性が出てくると思います。 例えば、いきなり目立った功績につながるかどうかは分からないけど、自分が興味を持って、本当にそれに対して向き合えるか。人によってはそれが情熱を持ってなのか、愛を持ってなのか、いろいろと変わると思うんですけど、どんなにつらくても、続けられるから気づいたら、質より量から量から質に変わっていくような……それは自ずと結果につながってきますよね。だからそこなのかな。好奇心とか興味とか、情熱とか、熱量とかは、愛情とかいろんな言い方あると思うんですけど、そういったものがあるからこそ難しい局面も乗り越えられる。やめないで済むんだから、いずれ、それなりの適切な結果に繋がるっていうことを信じられるかどうかかもしれないですよね」 続けるのは簡単なようでいて、何よりも困難だ。だからこそ、続けた先に得られるもの、見えてくるものがある。 そんな今のディーンにとって、本作はどんな存在なのか、最後に聞いてみた。 「Season3までひとつの物語、ひとつのキャラクターを続けるのは自分も初めてなので、そういうプロジェクト、役に出会えたことはすごく光栄だな、と思います。 これだけいろんなコンテンツが溢れている時代に、存在意義というものが問われると思うんですよ。それは作品としてもそうですし、自分の俳優という社会における役割、立場もそうですし。どうやったらそこに価値をプラスしているか、ということが次に繋げていけるかどうかの決定的な分かれ道だと思うんですよね。 それは、自分が情熱を持ち続けられるか、苦しくても楽しみ続けられるか、愛情を持ち続けられるかどうか、ということと同じぐらいに大事なのが、求めてもらえるか、ということ。ここはもう神のみぞ知る、というか、自分がどうこうできるような範疇じゃないところですよね。そこにおいては、ありがたみを感じるしかありません。本当に奇跡的なバランスで成立するからこそ、継続ができる。『パンドラの果実』もそういうものですね」 取材・文:ふくだりょうこ 撮影:友野雄 ヘア&メイク:森 智聖(VRAI Inc) スタイリング:渡辺慎也(Koa Hole inc.) <番組情報> Huluオリジナル「パンドラの果実~科学犯罪捜査ファイル~」最新章SP 6月16日(日) 午後10時30分~日本テレビ系にて放送(放送終了後Huluにて見逃し配信開始) Huluオリジナル「パンドラの果実~科学犯罪捜査ファイル~」Season3(全5話) 6月16日(日) 「最新章SP」の放送終了後、Huluにて独占配信開始 ※毎週日曜日に新エピソード追加