憲法改正が絶対条件に

そんななかで、石破首相は自民党総裁選で「アジア版NATO（北大西洋条約機構）」の創設や「日米地位協定の改定」を訴えた。

アジア版NATOとは、どれかアジアの加盟国が1つでも攻撃されれば、日本を含めて、他国が一丸となって支援に駆けつける仕組みだ。だが、日本が他国を防衛するためには、専守防衛を掲げた憲法の改正が絶対条件になる。

日米地位協定の改定も同じだ。トランプ氏は地位協定改定の前に、前提である「日米安保条約の不均衡を正せ」と言うだろう。日本が米国を守るためには、これまた憲法改正が必要になる。

逆に言えば、こうした日米関係の根本を無視したまま、アジア版NATOの創設や日米地位協定の改定を唱える石破首相を、トランプ氏はあきれるに違いない。

「オマエは自国の安全保障を米国に依存している実態が分かっているのか」「足元をよく見てみろ」という話なのだ。

石破首相の主張は浮ついていて、現状では実現可能とは言えない。一言で言えば、「空理空論」に近い。米国では、なおさらだ。有識者からは「とても無理」という声が噴出している。

今回の衆院選では、自民党の敗北が確実視されている。トランプ陣営は「どうせ、石破政権は長く続かない」と見切っているのではないか。

■長谷川幸洋（はせがわ・ゆきひろ）　ジャーナリスト。1953年、千葉県生まれ。慶大経済卒、ジョンズホプキンス大学大学院（SAIS）修了。政治や経済、外交・安全保障の問題について、独自情報に基づく解説に定評がある。政府の規制改革会議委員などの公職も務めた。著書『日本国の正体　政治家・官僚・メディア―本当の権力者は誰か』（講談社）で山本七平賞受賞。ユーチューブで「長谷川幸洋と高橋洋一のNEWSチャンネル」配信中。