白熱する来季F1ドライバー市場、“主役”はレッドブル離脱噂のフェルスタッペン&新規参戦アウディ?
多くのドライバーの契約が2024年末に満期を迎えることから、2025年に向けたF1ドライバー市場は爆発的な盛り上がりを見せるはずだった。 【動画】アウディ、F1参戦発表に際しショーカーを公開 ここには2026年にF1が大きなレギュレーション変更を予定していることが関係しており、次期F1マシンの開発が本格化する2025年のドライバー選択は大きな意味を持っている。 ルイス・ハミルトンのフェラーリ移籍やフェルナンド・アロンソのアストンマーティン契約延長など、既にいくつか重要な決定がなされたとはいえ、まだ多くのことが決着していない。 興味深いのは、誰もが同じタイミングで交渉を始め、決定に至り、発表するという訳ではないということ。そのため、ドライバーやチームは周囲の状況を見極めつつ、最善の道を模索する非常に複雑なビジネスを行なうこととなる。 一方で、メルセデスやレッドブルのようなチームは、2025年に向けてベストな選択肢が何なのか、時間をかけて見極める構えを見せている。 レッドブルでは、開幕5戦4勝を挙げるマックス・フェルスタッペンのチームメイトとしてセルジオ・ペレスがチーム残留を納得させるに十分な結果を残している。 そのため、レッドブルは2025年ドライバーラインラップ決定をしばらく(場合によっては夏まで)待ちたいと繰り返し語っている。 メルセデスもまた、ハミルトンの後任として2025年にジョージ・ラッセルのチームメイトになるドライバーに誰が相応しいかを考えている。早くからその候補として有力視されているのは、メルセデス育成ドライバーのアンドレア・キミ・アントネッリ。今季はFIA F2を戦いつつ、メルセデスでF1テストプログラムを実施する。 しかしフェルスタッペンとその関係者がレッドブルの将来性を疑うことになれば、フェルスタッペンがドライバー市場で獲得可能になるチャンスもわずかに残っている。 というのもレッドブル陣営内ではクリスチャン・ホーナー代表のスキャンダルや首脳陣の覇権争いなど、今年はシーズン序盤からフェルスタッペンも嬉しくないトピックで衆目を集めた。そして2026年からレッドブルが内製するパワーユニットについても、性能を疑問視しているのではないかという見方もあるのだ。 関係者によると、フェルスタッペンは現時点でレッドブル残留を完全に決めているようだが、仮にフェルスタッペンがフリーになる可能性が0.01%でもあるのなら、メルセデスは獲得に乗り出すはずだ。1席が空いているタイミングなら尚更だ。 しかしフェルスタッペンがレッドブルを離れず、アントネッリがもう1年F2に留まる、もしくは他のF1チームへ行くという結論が2024年末に出た場合、メルセデスにはプランBが必要になる。 “急がば回れ”という訳ではないが、メルセデスは状況を明確に把握するため、誰が獲得可能かを探して周っているのだ。 しかしドライバーにとっては、待てば夏にはレッドブルやメルセデスのシートが手に入るかもしれないという魅力が、全てのチームが静観を決め込むという訳ではないという事実によって抑制されている。 そしてドライバー市場でドミノ倒しを引き起こす可能性が大きいと考えられるのは、2026年からF1に新規参戦するアウディとその提携チームであるザウバーだ。彼らは既にドライバーにオファーを提示し、早急な決定を望んでいる。 アウディが目をつけていると見られるのが、父がアウディからダカールラリーに参戦したカルロス・サインツJr.とドイツ人ドライバーのニコ・ヒュルケンベルグ。情報筋によると、アウディは5月までに決断がくだされない場合、他を探す可能性も排除しないと明言しているという。 アウディのアレッサンドロ・アルンニ・ブラビ代表は中国GPの際、アウディが決断を下そうとしていることをほのめかした。 「アウディの発表とチーム改善のために行なわれる全ての投資のおかげで、我々が今後のドライバー市場においてこれまでとは異なる役を務めることができそうなのは嬉しく思っている」 アルンニ・ブラビ代表はそう語った。 「チームにとって良いニュースなのだとすれば、それはつまり自分たちが魅力的だということだと思う。我々は傍観者ではない。我々は市場のプレイヤーなのだ」 アウディがなぜ早い段階から積極的に行動しているのかは不明だが、親会社フォルクスワーゲン・グループの取締役会のタイミングと関係があるのかもしれない。 ただ、ハミルトンのフェラーリ加入により2025年のシートを探すこととなったサインツJr.のようなドライバーにとっては特に難しい状況だ。 サインツJr.は今すぐアウディの魅力的なオファーにサインを書くべきか? それともレッドブルやメルセデスのシートが手に入るかもしれないチャンスに全てを賭けるべきなのか? 2026年の次期レギュレーションが刻一刻と近づく中、数年後にレース勝利やチャンピオンを争うか、それとも煮え湯を飲まされることになるのか……ドライバーたちはその運命の別れ道にいることをよく理解している。
Jonathan Noble
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