誰でも「Webライター」になれる時代に”生き残る”条件とは?プロのノンフィクション作家に「人を惹きつける文章」を書くために必要なことを聞いた
海外のスラムや東日本大震災、教育現場と、あらゆる現場において独自の視点で精密な取材を続けてきたノンフィクション作家・石井光太氏。今回初めて自身の取材・執筆・企画の方法論を新著『本を書く技術』で明かしている。 誰でもWebライターになれると言われている今の時代、人を惹きつける文章を書くために書き手はどうあるべきなのか、石井氏に聞く(全2回の2回目)。 第1回:『コタツ記事が蔓延するwebメディアに対する苦言』
■強みを作り、唯一無二のものを手に入れられるか ――今はWebライターなど、文章を書いて生計を立てたい人にとって、入り口が広がっています。一方で誰でもWebライターになれる時代だからこそ、埋もれないためにはどう動けばいいでしょうか? 第1には、自分の強みをどう作っていくかです。人との差をどこで出せるのかと考えていくと、例えば早く原稿を出せる、インタビューが上手い、特定ジャンルに詳しい、外国語ができるなどいろいろありますよね。そこをきちんと磨いていかなければ、発注する人はいないわけですから。
ただし、そうした強みだけではその人でなければならない決定的な何かにはなりません。医療に詳しい人、モンゴル語を喋れる人、原稿が早い人はほかにもいるわけですから。 第2ステップとしては、他に誰もいない唯一無二のものを手に入れられるかどうかです。その人しかいないのであればそこの分野は独占できるわけですし、本の制作などの声もかかるようになります。 これはノンフィクションの分野の話になりますが、例えば、濱野ちひろさんが動物性愛者について書いた『聖なるズー』が第17回開高健ノンフィクション賞を受賞しました。また、畠山理仁さんは選挙候補者全員に取材しており、いわゆる“泡沫候補”と言われる人たちに話を聞き続けています。
他の誰もがやらない取材をしているからこそ、その人しかできない唯一無二の分野になるわけです。 ■ライティングは生きざまである ――石井さんはノンフィクションを書くための講座で人に教える機会を持っていらっしゃいますが、書きたい人に向けて教えている中で気づいたことなどはありますか? 一つの視点から見るだけでは人を惹きつける文章にならないということです。 例えば料理を作ると仮定して、和食しか勉強したことがない人は純粋な和食しか作れないかもしれません。しかし中華、イタリアン、インド料理を勉強した人が和食を作るなら、和食の中にほかのどの要素を足したら面白くなるか考えられて、立体的な料理を作れるようになると思うんですね。