コンビ結成31周年! 「あたりまえ体操」COWCOW "海外バズ"の先駆者が語る海外進出の壁の高さ
善し 自宅で見せたら、もう刺さり具合が違うんですよ。よく自分のピンネタを子供の前でやってたんですけど、比にならないぐらい喜んでくれて。お笑いをめっちゃ見てる子でもなかったから、「これなら普通の子供たちにもウケる」って手応えを感じました。 多田 その時期、「VTR用のネタを作って提出してくれ」ってことが続いたんですよ。09年に始まったソフトバンク主催の「S-1バトル」とか。その「S-1バトル」の「沖縄国際映画祭」大会に向けたVTR用のネタを提出することになって。 善し そういうのって普段舞台でやってるような漫才とかコントじゃないほうがいいなと。それで、「あたりまえ体操」を出したんです。 ■言葉と文化という海外進出の高い壁 ――13年にはインドネシア語版が現地で大人気に。15年にはインドネシア、タイ、マレーシアでライブを敢行します。 善し インドネシアは、日本人向けと現地の方向けのライブを2本やって、どっちもたくさんお客さんが入ってすごく楽しかったですね。 多田 タイでは「タイのあたりまえ」を当時"タイ住みます芸人"だったぼんちきよし君にアドバイスをもらって作ったら、ホンマに信じられないぐらいウケて。僕らは音源に合わせて体操するだけだから、言葉を覚えなくてもいいですし(笑)。 善し 動きだけでOKだから、ほぼミスがない(笑)。マレーシアは、マレー語、英語、中国語とか、いろんな言葉が交ざってる国だから、ちょっと難しかったですね。多田 ウケは悪くなかったんですけど、やっぱタイの衝撃がすごすぎたので。 ――その後、なぜタイやインドネシアで公演しなかった? 善し 生半可な気持ちでやったら続かないっていうのはあったんですよね。本気でやるんだったら、いずれは現地の言葉を覚えないといけないし。結局、録音してもらったものを流してるだけですから。
多田 僕、たまたまインドネシア大統領のジョコ・ウィドドさんに顔が似てて、それもすごいウケたんです。最初はそれでいいと思うんですけど、言葉を覚えないとトークやネタに広がりが出ないじゃないですか。当時、"住みます芸人"が稼働し始めたのも見てるから、よけいに「住まないと意味ない」っていうのがあったんだと思います。 善し 今いろんな芸人が海外の『ゴット・タレント』番組に挑戦してるのを見て、僕らも挑戦したい気持ちもありますが、ピンポイントでウケたとしても、その先の展開として言葉や文化を知る必要性が出てくる。 あと、例えば「あたりまえ体操」を多民族国家のアメリカでやるとしたら、「あたりまえ」の文言がなかなかハマらない難しさもありますよね。 多田 ただ、コロナ禍で海外向けにTikTokをやり始めたら、「これができたらきっと、これもできる」ってネタのインドネシア語バージョンが現地でバズったんです。 それが21年にインドネシアの大手銀行のCMソングに選ばれたりもしてるので、「あたりまえ体操」からのつながりっていうのは消えてないのかなとは思います。 ――10月からは単独ライブツアーがスタートします。やはり根底には「劇場が一番楽しい」という思いがある? 善し これだけ長くやってると、ネタ作りの苦しみ以上にウケたときの快感を知ってしまってるんです。僕らは毎日MCの仕事に追われてる身でもなく、時間はありますから(笑)。自分たちが面白いと思うネタをコツコツと作って、単独ライブを継続していきたいですね。 多田 やっぱり僕らの本筋は漫才。その太い幹があるからこそ、リズムネタやものまねみたいな枝ができてくるのだと思ってます。その意味でも、毎年の単独ライブで新ネタやリニューアルしたネタをやって、どんどんその幹を太くしていきたいですね。 ●善し(よし)1974年生まれ、大阪府出身。2013年に芸名を本名の山田與志から「善し」に改名。趣味はイラストとカメラ ●多田健二(ただ・けんじ)1974年生まれ、大阪府出身。2012年、「50音ギャグ」で『R-1ぐらんぷり』優勝。高校野球が好き ■全国ツアー「COWCOW 31st LIVE」10月6日(日)の愛知公演を皮切りに、全国4都市で開催。愛知公演・福岡公演はチケット発売中。東京公演・大阪公演は9月17日(火)11時から、FANYチケットにて先行受け付けを開始 取材・文/鈴木 旭 撮影/鈴木大喜