『アンメット』“安全の鬼”吉瀬美智子を変えた杉咲花の信頼 ミヤビの記憶がつながり始める
無意識の相互作用でドラマの定式を拡張する『アンメット』
津幡が過去を乗り越えたことは、今度はミヤビに影響を与える。助手を志願したとき、ミヤビの脳裏に再会してからの三瓶との会話がよみがえり、ミヤビは三瓶を信じてみようと思えた。前日の出来事を忘れてしまうミヤビにとっては、寸断されたとはいえ記憶がつながった瞬間であり、その鍵になったのは、相手を「信じる」という無形の感情だった。そのことと、目の前で津幡の変化を感じ取ったことは無関係ではない。登場人物が織りなす無意識の相互作用によって葛藤・対立状態を解消する一連の流れは、従来のドラマの定式を拡張するものとして評価できる。 三瓶をはじめとする登場人物たちは、ミヤビの失われた記憶に働きかける。ミヤビを知る綾野(岡山天音)と三瓶との三角関係や、救急部長の星前(千葉雄大)ら同僚との人間関係はドラマの契機を豊富にはらんでおり、第4話以降も充実した展開が期待できる。最後に、本作の劇伴を担当するのはfox capture plan。ピアノトリオとして精力的に活動するかたわら、『カルテット』(TBS系)、『コンフィデンスマンJP』(フジテレビ系)など映像作品の音楽を多数手がけている。本作でもコメディタッチの場面転換などで、最小限で最大の効果を上げている。
石河コウヘイ