資本効率改善急ぐ日本企業、株主還元や事業再編の駆け込み発表相次ぐ
年度末にかけ駆け込み的に株主還元策や事業再編策が発表された背景には、近年のコーポレートガバナンス(企業統治)を巡る改革機運がある。東京証券取引所が上場企業に対し投資家との対話を通じて資本効率の改善を促し、今年から毎月各企業の取り組み状況などを公表し始めたことで、企業側の対応に投資家の注目が集まっている。
加えて、機関投資家も企業の政策保有株について株主総会での議決権基準を厳格化してきており、6月末の株主総会シーズンを前に持ち合い株式の保有が多い企業を中心に何らかの対策を打ち出す必要に迫られている経営陣も多い。
昨年以降、コーポーレートガバナンス改革への期待は日本株が大幅上昇した原動力の一つになり、今年も最初の3カ月間だけで東証株価指数(TOPIX)は17%上昇した。投資家の焦点は、高まった期待に沿う具体的な取り組みが企業側から出てくるかどうかに移ってきている。
こうした中、今月下旬から本格化する決算発表シーズンでは多くの企業が本決算に併せて向こう3年間の中期経営計画を発表し、その中で資本の効率化についても方向性を打ち出すとの期待が高まっている。このため、今回の決算シーズンはガバナンス改革期待相場にとって大きなヤマ場となりそうだ。
三菱UFJアセットマネジメントの友利啓明エグゼクティブファンドマネージャーは「中期経営計画がポイントとなるだろう。大型株の間では既に方針を打ち出した企業も多いが、今後は中小型を中心に資本効率の改善が論点になる」とみている。
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Hideyuki Sano