6歳児の話を、4時間も聞いてくれた...黒柳徹子さんが『トットちゃん』を捧げた相手
「いいかい、みんな一緒だよ、一緒にやるんだよ」
『窓ぎわのトットちゃん』は、校長先生に捧げたくて書いたんです。話を聞いてくださった、あの信頼感。 いま、学校の先生も時間がないと思いますが、最初に子どもの話をそういうふうに聞いてあげられたら子どもは気持ちを開いて、「この人は、いい大人だ。味方だ」ときっと感じるに違いないと思うんですね。そういう時間がない、いまの学校は残念と思いますね。 子どもは敏感ですから、あのとき、もし校長先生が紙をめくったり、電話をかけたりしたら、私は話をすぐやめたと思います。 でも「ふーん、それで?」「ほう、それから?」とずっと聞いてくださったので、本当に聞く気があるんだなと、私も一生懸命話したんですね。だから、そのときから校長先生を大好きになりました。 ――では、楽しい小学校時代を? ええ、そうですね。私、いつも思うんですよ。障害を持った子が、トットちゃんの学校に何人もいました。校長先生は一度も「手を貸してあげなさい」「助けてあげなさい」っておっしゃったことはないんです。「いいかい、みんな一緒だよ、一緒にやるんだよ」って。 そうすると、子どもでも一緒にやるんだと思うと、どうすればいいか一生懸命考えます。私たち、ずいぶん遠くまで臨海学校で、ずっと向こうの静岡の土肥なんていうところに行ったりしましたから。 そういうときにはどうすればいいかっていうのを、自分たちで考えて一緒にやっていくってことを、子どものときに植えつけられたので。何をやるにも。 だから私はいま、聾啞者の劇団も持っていますけど。私たちは平気で劇場や音楽会に行くのに、耳の聞こえない人たちは楽しみがないわけでしょ。 だから、せめて手話でやる芝居なんかを見にいけたらいいじゃないかって。それは一緒にやろうっていう気持ちです。 【黒柳徹子(くろやなぎ・てつこ)】 東京生まれ。東洋音楽学校(現・東京音楽大学)声楽科卒業後、NHK専属のテレビ女優第1号として活躍する。1976年にスタートした「徹子の部屋」(テレビ朝日系列)の放送は、同一司会者によるトーク番組の最多放送回数世界記録を更新中。1981年に刊行された『窓ぎわのトットちゃん』は、国内で800万部、世界で2500万部を超える空前のベストセラーとなっている。2023年には、その続編となる『続 窓ぎわのトットちゃん』が刊行された。1984年からユニセフ親善大使となり、延べ39カ国を訪問し、飢餓、戦争、病気などで苦しむ子どもたちを支える活動を続けている。
黒柳徹子(俳優)