新CLでは「身体が持たない」 出場70試合超えのリスクも…英国人ファンが抱く切実な懸念【現地発コラム】
避けられない身体への大きな負担
筆者は、「従来のCL」最後の夜をロンドン市内南部の友人宅で過ごしていた。決勝テレビ観戦の宴を催してくれたクライブは、「完全に少数精鋭のトーナメントだった昔が懐かしい」と言う。1992年以前の大会をリアルタイムで経験しているファンの間では、よく聞かれる意見だ。 しかし、当初の16チームから2.5倍にまで増えた出場枠が、各国のリーグ優勝チームだけに戻されることなどあり得ない。クラブ側、特に支出を含めて経営規模の大きなビッグクラブ勢が、出場枠減少を受け入れるはずもない。 欧州最高峰の大会、言い換えれば欧州最大規模の「報酬」に対する主催者と参加者の欲の前では、試合の「質」のほかにも犠牲となるものがある。実際に試合でプレーする選手たちの「身体」だ。 「最悪のフォーマット変更」と評したのは、観戦会に顔を出した1人のマイケルだった。かつてはノンリーグ(セミプロ以下)の審判も務めていた彼は、イングランド人には珍しく、特定の贔屓チームを持たない“サッカーファン”。いつもと同じ中立的な視点から、「プレミアリーグの選手は給料をもらいすぎだと言われるけど、試合の数も多すぎる。疲労蓄積が進んで、大会のクオリティーは下がるんじゃないか?」と言っていた。 イングランドのトップリーグは、その過密日程でも世界的に知られる。 「ウチの息子なんかは、超一流アスリートとして練習もケアも行き届いているプレミアの選手なら大丈夫だとか言うんだけど、だからといって体力的な限界がなくなるわけじゃない。問題なくこなせるのはせいぜい50、60試合だと前に聞いたことがある。今時の主力クラスにしたら当たり前の試合数だと思うけどね」 マイケルの言うとおりだ。プレミアでは最終節まで優勝を争い、CLでも揃ってベスト8まで勝ち上がったマンチェスター・シティとアーセナルに目を向けてみると、出場試合数が「50」を超えたフィールド選手は合わせて8名。45試合以上となると計17名を数える。 ニューカッスル・ファンのクリスは、「CLでも、ますます怪我人の数が勝敗を左右するようになるんだろうな」と言う。グループ最下位に終わった今季の結果は、現チームとしては初体験に等しいCLとの二足の草鞋を履きこなす体力がなかったことが一番の原因だが、「フル戦力だったら」と、いまだに悔しがってもいた。たしかに、敗退が決まった昨年12月のACミラン戦(1-2)、ニューカッスルは相手の5名を上回る9名もの負傷欠場者を抱え、出場に漕ぎつけた3名も先発は叶わない状況だった。