肝っ玉母ちゃんが鍛えた“泣き虫ゆうじ”の成長記録「西田有志はベンチで踊っていればいい」辛辣エールは愛情の裏返し「私たちもさりちゃんが大好き」
現在、福岡で開催されている「ネーションズリーグ」で好調を維持するバレーボール男子日本代表。史上最強との呼び声高いチームは、パリ五輪で52年ぶりのメダル獲得が期待されている。その原動力にもなっているサウスポー西田有志(24歳)のルーツを両親に取材した。泣き虫だった少年は、父と母の予想を遥かに上回るスピードで階段を駆け上がっていった《NumberWebアスリート親子論/全2回の2回目、前編も公開中》 【秘蔵写真】「ぷにぷに超カワイイ~」ヤンチャ坊主になる前の西田有志ちびっこ時代「すげー飛んでる小学生時代」「海星高の写真には高橋藍の兄・塁の姿も…」頼れる日本のエースになった今と比較して見る(100枚超) 人生はいつ、どこで何が起こるかわからない。 もしかしたら、西田有志は埋もれていたかもしれない。その才能を、今につながる世界へと引き上げた転機は突然、訪れた。
敵将が発見したトンデモない才能
有志が通っていた海星高は地元・三重県では強豪校ではあったものの、そもそも全国レベルにはない。さらに中学時代に目立った実績があるわけでもない少年に陽が当たらないのは無理もなかった。 そんな有志の能力を最初に高く評価したのは、練習試合で対戦した福井工大福井高の西田靖宏監督だった。まだまだ粗さはあるが、スパイクは間違いなく一級品。そう確認した西田監督の推薦もあり、ユース代表候補合宿に呼ばれるようになった。 有志が初めて日の丸をつけて臨んだのは、2016年8月の日韓中ジュニア交流競技大会。中国で開催された大会を2勝1敗で終え、帰国した有志が嬉しそうに言った。 「俺、一番得点獲ったらしいで」 小学生時代から出場した大会の記録をメモするマメな父・徳美さんが調べても大会のデータはわからなかったが、その後すぐに翌年に開催されるアジアユース選手権の代表候補メンバーに選出されたことで、活躍は証明された。 ただ、アジアユースに向けた合宿で最初に任されたポジションは意外にもリベロだった。海星高ではサーブレシーブも担うアウトサイドヒッターだったが、西田の武器は何と言っても攻撃力であることは誰もが認めていた。確かに守備は得意ではあったが「このレベルではリベロになるのか」と両親は驚かされたという。 それでも有志は「自分がやることをやるのみ」と巡って来たチャンスに目を輝かせた。当然、そのままリベロであるはずもなく、ポジションは本来のオポジットに。そして、2017年3月にアジアユース選手権に出場するU19日本代表の一員に選ばれた。 この大会で上位に入ることができれば、翌年の世界ユース選手権への出場が決まる。「俺の力を見せつけてやる」とばかりに意気揚々と出発したが、しかし、戦いを終えた息子は帰国後にポツリと発した。徳美さんはその言葉を今でもはっきり覚えている。 「『宮浦(健人)くんには敵わない』って。そんなこと、後にも先にも言ったことはありませんから」 バレーボールを始めてから、周囲に自身を上回る選手などいなかった。有志にとって初めて“壁”となったのが1歳上で、同じ左利きのオポジット、宮浦だった。 誰にも負けないと思っていた自分のスパイクよりも豪快な音でボールをコートに叩きつけていく。U19日本代表で主将としてアジアユース選手権優勝に導いた宮浦が紛れもなくチームの軸だった。そして、西田は同年の世界ユース選手権のメンバーから落選する。 意気消沈する息子をどうやって励まそうか――普通ならそう考えるが、ここでも母は厳しく接した。 「あそこで落とされてよかった。選ばれていたら、それこそ天狗になっていましたから。(海星高でも)3年生でキャプテンになって、『周りをもっと見て行動しろ』と叱られているのを見て、ほら見てみぃ、お母さんが言うた通りやろ、と思っていたぐらい。だから私は今でも“宮浦くんさまさま”。それは有志も同じ。ずっと宮浦くんのことをリスペクトしているんです」 世界ユース選手権への出場が叶わず、さらに同年代に強大なライバルがいることも知った。打ちひしがれるか、それとも、燃え上がるのか。有志は後者だった。
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