俳優・岩谷健司、ピンク映画から社会派まで幅広く活躍。恋人の“理解”が必要な作品も一緒に鑑賞「その時の彼女が妻です」
撮影日を間違えて…
岩谷さんは、数多くの映画やドラマにも出演。2016年には、演劇ユニット「城山羊(しろやぎ)の会」の山内ケンジさんの監督作『At the terraceテラスにて』に出演。 豪邸に暮らす専務夫婦(岩谷健司&石橋けい)が開いたホームパーティがお開きを迎えようとする頃、専務の大学生の息子が帰宅。残っていたゲストは4人。他愛のない会話が交わされるなか、誰かがデザイナーの妻・はる子(平岩紙)の腕の白さを褒めたことをきっかけに思いもよらぬ方向に転がっていく…という展開。 ――登場人物みんなクセがあって、それぞれ狙っているものがある。 「性欲とかね。気持ち悪い、気持ち悪い(笑)」 ――言葉にも結構毒がありますね。 「そうそう。あの映画は、スズナリでやった舞台『トロワグロ』を映画化したもので、山内さんは、第59回岸田國士戯曲賞を受賞したんですよね。キャスティングも一緒だし、本当に舞台でやったままでした。おもしろかったですね」 2019年に出演した映画『岬の兄妹』(片山慎三監督)は、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭の国内コンペティション長編部門で優秀作品賞と観客賞をW受賞。この映画の主人公は、港町で自閉症の妹・真理子(和田光沙)とふたり暮らしをしている良夫(松浦祐也)。仕事を解雇されて生活に困った良夫は、罪の意識を感じながらも真理子に売春をさせて生計を立てようとする。そして良夫は、これまで知ることがなかった妹の本当の喜びや悲しみに触れることに…。 ――岩谷さんとは舞台でも共演されたことがあり、ピンク映画に出演されるきっかけになった松浦祐也さんが主演でしたね。 「そうです。松浦くんと片山さん(監督)が打ち合わせをしていて、俺もよく知らないですけど『この日空いています?』みたいなことを言われて。『大丈夫』って俺が言ったみたいだけど、正直忘れていて撮影日に待ち合わせ場所に行けなかったんですよ。1日間違えていて。 そうしたら、片山さんが家の最寄り駅まで車で迎えに来たんですよ。『あれっ?今日でしたっけ?』みたいな感じで(笑)。それで、『わかりました』って言って行ったんですけど、台本ももらってなかったので、何をするかもわからなくて。『これ何なの?』って感じでした(笑)」 ――主人公が妹に売春をさせることになるきっかけを作ったリストラ責任者でしたね。 「そう。俺がリストラしたから妹に売春をさせることになるんだけど、そんなのはやっているときは何も聞かされてないんで、全然わからないんですよ。口立て(完全な脚本がなく、口頭の打ち合わせで芝居をまとめていくこと)でこう言ってくれっていうのをやっていただけで。 完成したのを見て初めてこういう映画なんだ、ちゃんと撮っているんだって(笑)。しかもおもしろかったし、話題になって賞ももらって広がっていきましたしね」 ――すごい状態で撮影していたのですね。 「本当にね。台本はなかったけど、ペライチみたいなのはあったのかな。一応それは覚えて行ったんですけど、松浦くんに聞いたら『いらないです。覚えなくていいですよ』って。実際、覚えて行っても何の意味もなかったですけどね(笑)」