脚本・黒岩勉×大野公紀Pに聞く、『全領域異常解決室』の“仕掛け” 藤原竜也の起用理由も
日本神話と現代社会が交錯する壮大な展開が多くの視聴者を魅了しているフジテレビ水10ドラマ『全領域異常解決室』。12月11日に放送を控える第9話から、物語はいよいよクライマックスに突入。独自の世界観や藤原竜也演じる興玉雅をはじめとする個性あふれるキャラクターたちはどのようにして生まれたのか。脚本を手がける黒岩勉とプロデューサーの大野公紀に、制作の裏側や作品に込めた思いを聞いた。 【写真】「広瀬アリスに騙された…」狐ダンスをする雨野小夢 ●『全領域異常解決室』が生まれたきっかけは“伊勢詣” ――まず、『全領域異常解決室』が生まれた経緯について教えてください。 大野公紀(以下、大野):黒岩さんと弊社の成河(広明)さんと3人でお会いする機会があったんです。その時に黒岩さんから「全領域異常解決室という機関がアメリカにあるんですが知ってますか?」と言われたのがきっかけでした。 黒岩勉(以下、黒岩):思い出しました(笑)。さらに遡って話すと、僕が数年前に伊勢詣をしたのがきっかけなんです。外宮から内宮まで距離があったので、タクシーを利用させていただいたのですが、途中にある猿田彦神社にぜひ行ってみてくださいと運転手の方に言われて。その神社の境内に芸能の神様「天宇受売命(アメノウズメ)」を祀っているというお話があり、すごく興味深いなと思ったので、いろいろお話を聞いてみたのがはじまりです。 大野:神話と超常現象は本当に莫大なリサーチ量でしたよね(笑)。 黒岩:うん。僕は今のテレビドラマにはアカデミックな要素が少し足りていないんじゃないかと感じていて。日本神話では「イザナギ」と「イザナミ」という神様が知られていますが、みんなうっすら知ってるけど、実は深くは知らない領域なんじゃないかと思って。だから日本神話をテーマにしたテレビドラマで、学びのあるエンターテインメントとして見せたらすごい面白くなるんじゃないかなと思ったんです。 ――「神様が現実世界にいる」という衝撃の展開を第5話まで引っ張った理由は? 黒岩:実際、最初から神様がいるパターンでやろうという考えもありました。これは個人的な話になりますが、昔、成河さんと『O-PARTS~オーパーツ~』(フジテレビ系)というSFチックな深夜ドラマをやっていたんです。観ていただいた方には好評だったのですが、その時に民放の地上波でSFドラマをやることへの限界を知りました。やはり興味を持つ方が限られてしまうので。だから今回の物語の入りは老若男女が楽しんで観られるものにしたいなと思っていました。 大野:打ち出し方は本当に精査しましたね。黒岩さんのおっしゃる通りで、事件解決というエンタメを楽しんでいただいた先に、 こんな奥行きがあるんだということを知ってもらうゲームチェンジが今回のドラマで大事なポイントになったなと。 ●黒岩勉「叫ばない藤原竜也さんが見たかった」 ――藤原竜也さん演じる興玉雅のキャラクター設定はどのようにして作られたのでしょうか? 黒岩:そもそも藤原さんじゃないと成立しない企画なんです。「僕も神です」のセリフを人間が言うなんてなかなかハードルが高いじゃないですか(笑)。5話分の助走があるとはいえ、やっぱり演じてる人に説得力がないと絶対に成立しない世界観なんです。なので、興玉役に藤原さんが決まった時に、「この企画、いける!」と思いましたもんね。僕自身もずっとご一緒したいと思っていたので、すごく嬉しかったです。 大野:「藤原さんしかいない」と思ってオファーしました。藤原さんの起用理由は、唯一無二の存在感と説得力です。藤原さんの過去の作品を観ても、皆さんの心に残る名言、名場面を数々作ってこられているので、今作でもインパクトを残してくださるのではないかという期待感とワクワクがありました。 ――そんな興玉と広瀬アリスさん演じる雨野小夢のバディはどのように誕生したんですか? 大野:藤原さんとの化学反応を見てみたいと思ったんです。広瀬さんのすごさは、自然体なお芝居ももちろんのこと、コミカルなところも含めた演じ分けの器用さだと思っていて、空席である全決の室長が実は小夢だったことが後々判明したときの溶け込み方は意識していました。雨野小夢は警視庁の別部署から「全領域異常解決室」という謎の組織に来る視聴者目線のキャラクターです。この世界の中で興玉が、風変わりな存在だからこそ、そこは視聴者の目線に近いようなリアクションで演じてくださる方を起用したいという思いがあり、それがはやっぱり広瀬さんだなと。 黒岩:僕は叫ばない藤原竜也さんが見たかった、というのが大きいです。藤原さんは何千年も生きてる神の目線で世の中を見れる超然的なキャラクターで、すごく落ち着いているじゃないですか。対して、雨野は自分の大事さに気づいたり、世界の構造の違いに気づいたりとか、第1話から最終話までずっと印象が違うんです。変わらない人と変わっていく人がバディを組むのが面白いなというのは考えていました。