なでしこジャパンの小柄なアタッカーがマンチェスター・シティで司令塔になるまで。長谷川唯が培った“考える力” <RS of the Year 2023>
WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)、ラグビーワールドカップ、サッカー・FIFA女子ワールドカップ、世界陸上、バスケットボール・FIBAワールドカップ……数々の世界大会が開催され、多くのアスリートの活躍に心揺さぶられる1年となった2023年。一方で、小野伸二さん、石川佳純さん、岩渕真奈さんなど、長く第一線で競技を背負ってきたレジェンド選手たちが現役引退を決意したことも印象的な一年となった。そこで、結果や勝敗だけではないスポーツの本質的な価値や魅力を伝えてきた『REAL SPORTS』において、2023年特に反響の多かった記事を振り返っていきたい。今回は、イングランド1部・女子スーパーリーグのベストイレブンにも名を連ねた長谷川唯選手のインタビュー記事だ。 (2023年10月23日公開) =================================
なでしこジャパンの攻守を司る長谷川唯は、昨シーズン、マンチェスター・シティのサポーター・選手・チームスタッフが選ぶプレーヤー・オブ・ザ・シーズンに選ばれ、イングランド1部・女子スーパーリーグのベストイレブンにも名を連ねた。加入2シーズン目の今季も開幕から好調を維持し、チームの好スタートを支えている。小学6年生の時には身長が1m35cm、体重は20kg台後半だったという長谷川が、持ち前の技術力を生かし、世界のトッププレーヤーたちと渡り合うために磨いてきたインテリジェンス=考える力に迫った。 (インタビュー・構成=松原渓[REAL SPORTS編集部]、写真=ZUMA Press/アフロ)
女子スーパーリーグが開幕。シティの好スタートを牽引
――10月1日に女子スーパーリーグが開幕して約1カ月が経ちましたが、マンチェスター・シティは2勝1分(編集部注:取材日は9月18日)と好スタートを切りました。長谷川選手もアンカーのポジションで3試合に先発してハードワークを見せていましたが、コンディションは良さそうですね。 長谷川:そうですね。プレシーズンはワールドカップで心身ともに戦ってきた疲れもあったんですが、開幕までに少し休みがありましたし、日本での国際親善試合(9月23日のアルゼンチン戦)も含めていい状態を作れたので、個人としてもチームとしても、本当にいいスタートが切れたと思います。 ――開幕戦はウェストハムと対戦して、代表のチームメートでもある清水梨紗選手、林穂之香選手、植木理子選手に2-0で勝利しました。日本人が4人同時に海外リーグのピッチに立つのは初めてだったと思いますが、どうでしたか? 長谷川:今までは海外で日本人選手と対戦すること自体が珍しいことで、ウェストハムにいた2021年に岩渕(真奈)さんと試合をしたのが初めてだったのですが、あの時もすごく新鮮な感じがしたんです。今回はまた違った感じで、3人との対戦を本当に楽しめましたし、試合を見てくれた人には日本人選手の良さが伝わったんじゃないかなと思います。 ――続く第2節のチェルシー戦では、2人の退場者を出しながらも全員がハードワークを見せて、リーグ4連覇中の王者に1-1のドローでした。イエローカードが多く出たことも含めて、女子サッカーでは珍しい展開でしたよね。 長谷川:そうですね。今年からプレミアリーグ(男子)のカードの基準が厳しくなって、それが女子にも適用されることはリーグから事前に説明があったんです。ただ、あの試合は注意もほとんどない状態で一気にイエローカードが出てしまったので、それをチームメートが審判に伝えに行ったら、そこでまたイエローカードが出てしまうという流れの悪い試合でした。もちろん勝ちたかったですが、最低限の結果は残せたと思いますし、自分自身あそこまで長い時間を9人で戦ったことがないので、この経験をプラスにしたいです。