横浜DeNAが作った公式映画の凄い中身 ~「ダグアウトの向こう 2013」~
この手のスポーツドキュメントとしては、1998年のワールドカップでのフランス代表チームを追った「レ・ブルー」が有名で、日本でも2002年の日韓ワールドカップでの日本代表チームを追ったドキュメント映画「6月の勝利の歌を忘れない。日本代表 真実の30日間ドキュメント」(映画監督、岩井俊二が編集)が発表されているが、日本のプロ野球界を扱ったドキュメントとしては極めて異例だろう。 製作、監督は、横浜DeNAの事業本部映像事業部の三木慎太郎・部長。球団職員でないと裏側に入れないという事情もあって、元テレビマンで野球番組のプロデューサーから転職してきた三木さんが、たった一人でハンディカメラを持ってチームを追った。一作目では中畑監督や選手から「カメラを止めてくれ」、「こんなとこまで撮影するんですか」と、時折、苦情もあったというが、出来上がった作品の評価と、時間をかけて三木さんと監督、選手との間に信頼関係が生まれたことも手伝って、今回は、球場外での情報も集まりやすくなり、より赤裸々な姿に肉薄することに成功したという。 「球団、監督、選手の理解があってこそできた作品です。野球には予期せぬことが起きますから忍耐を持ってカメラを回すことなんです。カメラを回したら、あまり喋らず黙って、そこにいること。冒頭のシーンに中畑監督が、『勝』というスローガンを色紙に書く場面がありますが、奥さんが亡くなられて、まだ間もない頃でした。一緒に酒を飲み、ご自宅に招いていただき、恐る恐るカメラを取り出し回しました。作品としては、ちょっと試合映像が多かったかとは思いますが、膨大なフィルムの編集には苦労しました。最後に小池選手の引退試合を追ったことも予期せぬドラマになりました。ベイスターズのファンだけでなく、一般の野球ファンの方々にも、野球の魅力を知ってもらうきっかけになればと思います」 撮影された映像は、18時間収録可能なSDカードが10枚分で延べ180時間。その膨大な映像をシーズン中から丹念にチェックしながら、決して音声や映像を前後させる演出上の切り張りをすることなくリアリズムにこだわって編集された。