「ブラザーの対抗TOB」でも投資ファンドを頼るローランドDGの謎 タイヨウはかつての親会社非公開化でも登場
■特別委員会の独自の動きが見えない 特別委独自のLAとして西村あさひ法律事務所を雇ったのも3月22日のことだった。本来ならタイヨウによるTOB開始以前にやっているべきことだ。DGが開示したのはタイヨウがTOB期間延長を公表する前日の3月26日。つまり当初の買い付け期限の1日前だった。 さらに現時点では特別委独自のFAは雇っていない。また、かねてDG経営陣が主張している「ブラザー相手では『ディスシナジー』が発生する懸念がある」という主張を特別委も支持している。そのディスシナジーとは何なのかの具体的な説明もいまだにしていない。
そもそもDGがタイヨウ以外に買収候補者として声をかけた対象は2社あるのだが、そのいずれもがファンドであって事業会社ではない。 ファンドによる買収は基本、LBO(レバレッジドバイアウト)になる。LBOとは、買収するファンドが設立したペーパーカンパニーが、ファンドからの出資と借入金で買収資金を調達し、最終的には借入金を買収する会社に負担させる手法だ。 具体的には、ペーパーカンパニーは非公開化後、買った会社と合併し、借金を買った会社にツケ回す。つまり買われた会社は買収者が借りた多額の借金を背負わされる。事業会社による買収では、事業会社自身が資金調達をするので、基本、LBOにはしない。つまり買われた会社は借金を背負わされない。
タイヨウは今回の買収費用642億円のうち、出資は200億円だけ。残る442億円は借金だ。非公開化後にペーパーカンパニーが非公開化後のDGと合併するのかどうかの記載は公開買付届出書にはない。だが定石通り合併すれば、年商540億円のDGが、442億円もの借金を背負うことになる。 ■代償として残る借金の重み DGは2022年12月期までは実質無借金だったが、タイ工場と本社の新築費用調達のため、2023年12月期末時点で28億円の有利子負債がある。そこへ442億円がのしかかるのだ。