総選挙で拡散した/する偽・誤情報への「情報のワクチン」【解説】
メディアを貶める偽・誤情報
選挙に関する情報を最も多く報じているのは今も新聞やテレビだ。「もっと多く報じるべきだ」「本格的な政策の分析が足りない」「一部の候補者に偏っている」などの批判とは別に、事実に基づかない誤った情報も拡散する。 代表的なものは投票締め切り直後、まだ開票率がゼロ%のうちに「当選確実」を報じる「ゼロ打ち」に対して「出来レース」「最初から誰が勝つか決まっている」などという批判だ。 JFCでもこれまでに何度も記事にしたが、これは記者による取材や世論調査、期日前と投票日当日に誰に投票したかを聞く出口調査や過去のデータなどを総合的に分析した結果だ。逆転の可能性がほぼゼロの場合に「ゼロ打ち」をする。 大阪府知事選の当確が早すぎる、不正選挙?ゼロ票打ちによるもの【ファクトチェック】(関連記事でご覧ください)。 筆者(古田)も新聞記者時代に何度か経験している。各社で積み上げた統計学的な手法も用いているため、外れることは極めて稀だ。「当打ちの速さを競うよりも候補者や政策の取材や議論に時間を使うべきだ」という批判に関して筆者も同意見だが「出来レース」という批判は完全に誤りだ。 「各政党や候補者を平等に取り上げていない」という批判も毎回広がる。日替わりで各政党について紹介しているのに、ある1日だけの放送や記事を見て「◯◯は特定の党しか取り上げていない」という批判は事実に基づいていない。 東京都知事選の際に、著名な候補ばかりを取り上げることによって、政治の世界での新顔が不利になる傾向が指摘された。このような問題は実際に存在し、改善が求められる。 しかし、事実に基づかない批判はマスメディアへの信頼を不当に貶め、結果として、選挙全体への関心や信頼を損ねかねない。
選挙に関する解説記事
JFCでは総選挙に向けて選挙にまつわる偽・誤情報の解説記事を毎週公開しています。ぜひ参考にしてください。 自民党総裁選で偽・誤情報の標的になっているのは誰か その理由は 自民党総裁選をめぐって、偽・誤情報が拡散しています。候補者の誰が、なぜ標的になるのか。偽・誤情報の作成者・拡散者の特徴や動機について、日本ファクトチェックセンター(JFC)がこれまで公開した検証記事やSNS、検索データなどをもとに解説します。 自民党総裁選で偽・誤情報の標的になっているのは誰か その理由は【解説】 選挙で拡散する偽・誤情報、AIの影響は? 標的は候補者だけでなく民主主義【解説】(この2本の記事は関連記事の「解説・コラム」でご覧ください)・
次回:ライブ検証とファクトチェックの効果
アメリカ大統領選の候補者討論会では、ドナルド・トランプ氏とカマラ・ハリス氏の発言をメディアやファクトチェック機関がライブでファクトチェックし、トランプ氏の多くの発言やハリス氏の一部の発言が「誤り」「ミスリード」などと判定されました。 日本ではほとんど見かけないこの「ライブ検証」。日本とアメリカのファクトチェックや偽・誤情報の傾向の違いと、ファクトチェックの効果について次回は解説します。 判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。