「何のため?」疑問の声相次ぐが…本当にパリ五輪女子マラソンで骨折欠場した前田穂南の補欠入れ替えなしは日本の“不手際”なのか…鈴木優花は6位入賞の大健闘
大会のルールでは前日朝(男子は8月9日、女子は8月10日)まで選手変更は可能になっていたが、日本は独自に補欠解除指定日(8月2日)を決めていた。その理由は、「正選手が調整段階に入ることでけがのリスクがほとんどなくなったこと、補欠選手の精神的ダメージを配慮したため」としている。 前田のケガは非常に微妙なタイミングで判明したため、対応が難しかったといえるだろう。 長距離ランナーの「疲労骨折」はスプリンターによく起こるハムストリングスなどの「肉離れ」と異なり、自分で認識するのが難しい。今回のようなリスクを回避するとしたら、補欠解除日の前に選手全員がMRI検査を含むメディカルチェックをするしかないだろう。 一方、補欠選手を前日解除するとなると、現地まで帯同する必要がでてくるし、その予算も負担しなければならない。補欠選手も出場するのかわからないレースに向けて「調整」をすることは大きな負担となる。たいていの補欠選手は万が一の五輪に備えつつ秋のマラソンレースに向けてトレーニング計画を立てているからだ。 日本陸連がレースの約1週間前に補欠解除日を設けているのは、非常に合理的な判断といえるだろう。 なおパリ五輪マラソン日本代表選考要項では、補欠選手は「MGC上位の競技者を補欠として選考する」と記されており、男子はMGC4位の川内優輝(あいおいニッセイ同和損保)、女子は同3位の細田あいが選ばれていた。そもそも補欠選手は強制ではなく「辞退」もできる。彼らもシステムを理解したうえで、納得して補欠に入ったと考えるべきだろう。 もし前田や細田が走っていたら、どうなっていたのか。ひとりのファンとして妄想しないことはないが、日本陸連の対応を責める声には違和感がある。ただ今回のパリ五輪の教訓を生かして補欠解除日を当該選手と相談して決めるなど、「アスリートファースト」の視点で新たなシステムを構築していっていただきたいと思う。 (文責・酒井政人/スポーツライター)
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