【師走ひと模様】年末は運命の一冊と 福島県南相馬市の大浦秀航さん
本は心に活力を与える―。福島県南相馬市の大浦秀航さん(66)は、経営する市内小高区の「小高古本店」を眺め感慨に浸る。 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故で弱った自身の心身に、読書がやる気をくれた。各地で天災が相次いだ1年だった。年の瀬にかけがえのない一冊と出合ってほしい。そんな思いで過ごしている。 ◇ ◇ 浪江町で塾を営んでいた。自宅のある小高区の避難指示が解除され2017(平成29)年に帰還したが、地域に人は戻らず、空き地ばかりで落胆した。 「この先どう立て直したら良いのか」。人生に迷っていた時、地元の図書館で手に取ったのが角田光代さんと岡崎武志さんの作家2人によるエッセー集。古本に対する深い愛情が語られていた。 大学時代に諦めた古本店のオーナーになる夢を思い出した。「好きなことに打ち込めば、元気になるはず」。地域の住民の力にもなると考えた。 ◇ ◇
今年11月1日にオープンした。店には文芸書や漫画約3500冊が並ぶ。開業からもうすぐ2カ月。徐々に客足が増えつつある。「誰もが良い本に出合える本屋にしたい」と理想を思い描く。 「小高古本店」の住所は南相馬市小高区東町1の50。営業時間は午後1時から同6時まで。日、月、火曜日が定休。インスタグラムアカウント「@odakafuruhonten」で情報発信している。