広がる食材偽装 「牛脂注入肉」で気をつけるべき点は?
大阪新阪急ホテルのメニュー虚偽表示問題からはじまった食材偽装問題は、全国各地の有名ホテル、旅館に広がっています。その中でも注目されているのが「牛脂注入肉」です。大阪新阪急ホテルではビーフステーキを表示した肉の中身が牛脂注入肉でした。ほかにも宝塚ホテル(兵庫)や大和屋本店旅館(愛媛県)でも虚偽表示されていました。牛脂注入肉とは一体どういう肉で、私たち消費者は何に気をつければよいのでしょうか。
硬い肉を「食べやすく」
牛脂注入肉は牛の硬い赤身肉に和牛の脂や調味料などの添加物(ピックル液)を注入した牛肉です。食肉業界では「インジェクションビーフ」と呼ばれ、注入によって赤身肉はサシの入った霜降り肉へと変身します。牛脂注入された牛肉は、元のかたまり肉に比べおよそ2倍ほどになるといわれます。風味も和牛の脂を使っているので和牛そのものです。 牛脂注入肉そのものは違法でもなんでもありません。似たような料理方法は昔からあります。たとえば、ハムには針を使って肉に調味液を染み込ませる技法があります。言い換えれば、硬くて食べにくい肉を食べやすいように加工しているだけですから、これが悪いわけではありません。
十分な加熱が必要
しかし、牛脂注入肉には気をつけなければいけない点があるのも事実です。それが食品衛生上の問題です。簡単にいえば食中毒の危険性があるということです。この問題について農林水産省畜産部長の原田英男氏がツイッターで解説しています。いくつかを抜粋します。 > 【成型肉などの話(5)】食品衛生法でこれらの加工肉に表示を求めているのは、加工処理により、微生物汚染が内部に拡大するおそれがあるためで、併せて「飲食に供する際にその全体について十分な加熱を要する旨を記載する」ことになってます。十分な加熱はO157対応の肉の中心で75度1分以上。 > 【成型肉などの話(6)】また、アレルギー物質についても、加工処理の過程で利用される場合があります。消費者庁は「加工食品のアレルギー表示の徹底について」という指導通知で、「飲食店などで提供される食品については、アレルギーに関する情報伝達が適切になされるよう」指導してます。 > 【成型肉などの話(9)】一連の事案で調理者が、自分が調理している食材が「成型肉など加工肉」であることに気が付かない、というのは信じ難い話ですが、仮にその認識がない場合、加熱不足による食中毒や情報提供不足によるアレルギー発生のリスクが高まることは、看過できない問題かと思います。 しっかりと加熱していれば問題ありませんが、レアとなると加減が難しい点もあります。調理する人が加工肉だと認識していれば、しっかりと加熱処理をするでしょうが、この時点で表示を偽装しているとすると、加熱処理が十分でないものが供出される可能性があるからです。