左半身にまひがありながらも再び運転ができるようシミュレーターで訓練する男性＝岐阜市寺田、山田病院

　病気や事故でまひが残った人を再び車の運転ができるように後押ししようと、岐阜市寺田の山田病院が「自動車運転支援外来」を始めている。リハビリによって運転を諦めなくても済むケースは少なくないといい、院内のシミュレーターを使った訓練や自動車学校での実技で機能の回復を確かめながら、車社会での日常を取り戻せるよう支援する。 　同病院によると、自動車運転支援に特化した専門外来は県内初で、まだ全国的にも珍しい。脳卒中や頭部外傷、脳疾患の術後などで片まひや高次脳機能障害があって車の運転が難しい人のニーズに応えようと、同院では先月から始めた。 　道交法では、認知、予測、判断など、運転に必要な能力を欠く恐れがある症状が出る「一定の病気」の人には、免許更新時に公安委員会に申告するよう義務づけている。病状によっては免許の取り消しや停止になり得る一方、リハビリで機能を回復することで再取得できるケースがある。 　自動車検査登録情報協会によると、岐阜県は軽乗用車を含む1世帯当たりの自家用乗用車の保有台数（3月末時点）が1・518台で、都道府県別では全国9番目に多い。担当医の安藤弘道院長は「特に40代や50代といった現役世代で脳卒中などを発症して車の運転ができなくなるのは困るはず。車社会の岐阜だからこそ必要になる専門外来」と思慮する。 　運転支援に特化することで、回復が難しい機能を車の改造で補うといった具体的な支援につなげられるのが特徴。神経心理学的検査で注意力や判断力などを診て、シミュレーターや止まった車で運転技術を確かめる。医師との面談、自動車学校での実車訓練などを経て、再開を模索する。 　シミュレーターでの運転訓練に臨んだ同市の運送業の男性（42）は2年ほど前に脳出血で倒れ、左半身にまひが残る。「行動範囲が限られ、買い物一つにも苦労している」と話す。釣りが趣味で、公共交通機関では行くのが難しい穴場へ再び出かけるのが目標だ。 　対象は現状、発症から6カ月以内の保険診療のみだが、より多くのニーズに応えようと、自費診療も含めた支援も検討している。安藤院長は「可能性がある限りは、車の運転を諦めなくてもいいように支えたい」と話した。 　診療は予約制で、毎月第2、4水曜の午後2～4時に実施する。問い合わせは同病院、電話058（254）1411。