コロナ禍、震災10年のセンバツ「新しい力に」仙台育英・島貫丞主将
「高校球児の憧れの舞台である甲子園が、戻ってきました」。兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で19日午前に開幕した第93回選抜高校野球大会の開会式で、選手宣誓を務めた仙台育英(宮城)の島貫丞主将(3年)は新型コロナウイルス禍の1年での「学び」を語りつつ、東北の代表校として10年の節目を迎えた東日本大震災にも触れ、「私たちが新しい日本の力になれるように、歩み続けます」と力強く宣誓した。 【選手宣誓する仙台育英の島貫丞主将】 宣誓では甲子園が戻ってきた喜びで切り出した後、「この1年、日本や世界中に多くの困難があり、それぞれが大切な多くのものを失いました」。センバツの前回大会が中止になったほか、社会のあらゆることに影響を与えた新型コロナ禍のこの1年をこう表現。その中で「答えのない悲しみを受け入れることは、苦しくてつらいこと」だった半面、「当たり前だと思う日常」が「誰かの努力や協力で成り立っている」ということなど「多くのことを学んだ」と振り返った。 さらに2月の組み合わせ抽選会で日本高校野球連盟の八田英二会長から贈られた「感謝・感動・希望」の「3K」をキーワードに、「甲子園で野球ができることに感動」と高校球児の喜びを代弁。「失った過去を未来に求めて。希望を語り、実現する世の中に」と力を込めた。 福島県出身で東日本大震災の当時小学1年生だった島貫主将。福島市の自宅や家族は無事だったが、東京電力福島第1原発事故の影響による不安な日々が続き、半年ほど山形県に避難もした。日本全国からの支援で野球を続けられてきたとの思いもあり、宣誓には「乗り越えられるんだという明るい未来や希望を与えられる言葉は絶対に入れたい」と考えていた。 宣誓では日本や世界中から多くの支援をもらったことに感謝。「あの日見た光景から想像できないほどの希望の未来に復興が進んでいます」と仲間に支えられながら困難を乗り越えてきた10年を語り、「これからの10年」について「私たちが新しい日本の力に」と自分たちが受け継いで前に進む意思を示した。 最後に「春はセンバツから。穏やかで鮮やかな春、そして1年となりますように」と願いを込め、前回大会の中止で春の甲子園大会に来られなかった先輩たちの思いも背負って「2年分の甲子園。一投一打に多くのおもいを込めてプレーすることを誓います」と締めくくった。 「自分の言葉でしっかり話して、それを届けられた」と宣誓後のインタビューで安堵(あんど)した表情を見せた島貫主将。東北地区の代表校はこれまで春夏通じて甲子園で優勝したことがない。チームのスローガンは「日本一からの招待」。震災、コロナ禍とさまざまな思いが重なる年に、初めて「白河の関」を越えて優勝旗を東北に持ち帰るつもりだ。【面川美栄】 ◇全31試合を動画中継 公式サイト「センバツLIVE!」では、大会期間中、全31試合を中継します(https://mainichi.jp/koshien/senbatsu/2021)。また、「スポーツナビ」(https://baseball.yahoo.co.jp/senbatsu/)でも展開します。