風車の周りを飛行するドローンの正体 九大の「風を読む技術」が大規模洋上風力発電所の建設を後押し
脱炭素社会実現の切り札とされる「洋上風力発電所」。 四方を海に囲まれた日本では、福岡県や佐賀県などで大規模な洋上風力発電所の建設が検討されていますが、課題となっているのが「風車ウエイク」と呼ばれる現象です。九州大学でその実態に迫る研究が進んでいます。 【写真で見る】海外の研究者も注目する「風車ウエイク」
風車の周りに列をつくる6台のドローン
巨大な羽根が勢い良く回転している福岡県北九州市若松区の風車。次々と上空に飛び上がった6台のドローンが列になって、約10分間、風車の周囲に留まりました。 RKB 今林隆史記者 「風車の周りを飛行しているあわせて6台のドローン。風車特有の問題を測定しています」
「風車ウエイク」とは何か
福岡県北九州市沖などでは、大規模な洋上風力発電所の建設が予定されていますが、その発電量を大きく左右するのが「風車ウエイク」と呼ばれる現象です。上空にとどまるドローンは、その現象の実態をとらえるためです。 九州大学 内田孝紀教授 「風車のブレードの後ろにはすごく変動の激しい、変化の激しい乱れた流れが形成されますが、それを我々は『風車ウエイク』と呼んでいます。正しく理解して、それを予測しないと、日本の厳しい気象と海象条件に合ったウインドファーム(大規模洋上風力発電所)は建設できません」 「風車ウエイク」とは、羽根が回転した際に風下側で流れが乱れて風が弱くなる場所ができる現象です。多くの風車を設置する場合、風下側の風車の発電などを左右してしまします。この「風車ウエイク」の影響を正確に見積もることが効率の良い発電につながりますが、その実態は十分に解明されていません。そこで内田教授たちが目を付けたのが、ドローンに備わったある機能です。
ドローンの特性が実態を解明する
九州大学 内田孝紀教授 「ドローンは、4つのローターの回転数を調整しながら少しずつ角度を変えて留まるんですよね。留まっているということは、それなりにその風を受けて留まっているわけですから、風の強さに変換できるということになります。だからこのドローンを使って風を測れるのではないか、という発想ですよね」 ドローンには風が変化してもその場所に留まろうとする機能があります。内田教授たちは、九州大学にある大型実験施設で、風の強さによってドローンの羽根の回転数と向きがどう変化するか求め、そのデータをもとに風速を逆算する手法を確立しました。さらに内田教授が開発した風を再現できる計算モデルと組み合わせることで風車ウエイクの実態に迫っていくのです。 九州大学 内田孝紀教授研究室 「今この響灘で検証していますが、ここで得られた知見、シミュレーションの方法、条件設定が確立されていくと、別の場所でのシミュレーションの精度も上がっていきます」