リーゼントボクサー和気が涙の1年ぶりTKO再起
元東洋太平洋Sバンタム級王者の和気慎吾(29、FLARE山上)が19日、後楽園ホールで行われたSバンタム級8回戦で、元同級日本暫定王者の瀬藤 幹人(37、協栄)を5回2分31秒TKOで下し約1年ぶりの再起戦を飾った。和気は、昨年7月に、ジョナタン・グスマン(ドミニカ共和国)とのIBF世界同級王座決定戦で“顔面が崩壊”する壮絶な11回TKO負けして以来、網膜剥離の手術や、ジム移籍などの困難を乗り越えての復帰リングだった。この試合で、和気にダメージがなかったことから次戦は、9月13日に大阪で行われるIBF世界同級王者、小国以載(角海老宝石)対同級1位の岩佐亮祐(セレス)の世界戦のアンダーカードで世界ランカーと対戦する方向でマッチメークを進めていく予定だ。 ボクシング界の“リーゼント番長”が泣いた。 「本当に不安でリングに上がることが怖かった」 約1年ぶりの復帰戦を5回TKOで飾った和気は感極まった。 ジム移籍のプレッシャーと1年ものブランク。「負けることへの恐怖」「お客さんが応援してくれるのだろうか」の不安に潰されそうになった。だが、長渕剛の「ひまわり」の入場曲に乗ってリングインしてキャンバスの上でステップを踏むと、少しずつ不安が小さくなっていく。 「もてる力を出し切ること。それだけは意識していた」 5度もダウンした1年前のグスマンとの世界戦では序盤に手が出ずぺースを握られた。 相手は引退をかけて立ち向かってくる50戦を怒る超ベテランの元暫定日本王者。プレスと気迫に押され、和気のブランクを考えると、また手が出なくなってもおかしくなかったが、1ラウンドから軽快に攻めた。自分の距離をとりながら、左周りにサークリングしながら左ストレートを狙い、ガードが上がると、空いたボディにパンチを放り込んだ。レフトフックがヒットすると、もう37歳の瀬藤はよろけた。 「KOできると思った。前へ前へ出ていった」 2ラウンドには瀬藤の前進を左のアッパーで止める。ロープにつめては左ストレートを軸にしたコンビネーションブロー。相手の動きがよく見えていた。グチャグチャの展開に巻き込まれそうになってもペースを乱さない。5ラウンドに入ると、「これまで試合で打ったことがなかった。練習で身につけたパンチ」という左のオーバーフックを効かせ、右のフックを返し、さらに連打を浴びせると、コーナーからタオルが舞った。 「結果が出てほっとした」 グスマン戦で負った頬の裂傷の傷は今でも消えていない。右目の眼下底骨折に、網膜剥離。ボクサー生命の危機に追い込まれる壮絶な敗戦だったが「引退は考えなかった」という。網膜剥離を手術で修復して、大晦日には、その無敗のグスマンが、4年前に和気がTKOで破って東洋のベルトを奪った小国にダウンを奪われ敗れた。ジムでスタッフ一同とテレビ観戦していた和気はショックを受けた。 「悔しかった。あれだけのことを徹底したボクシングはリスペクトするが悔しい思いが強かった」