パイナップルから植物性レザーを、セレブのためではないサステナブル素材
サステナブルな商品に対して、どんなイメージを持つだろうか。確かに環境に良いという利点は浮かぶが、同時に従来製品より「割高」「耐久性や品質などで劣る」といった印象があるかもしれない。 繊維ファッション業界は環境負荷の高い業界として知られている。レザーという分野において、これら代替製品の欠点をカバーしつつ環境負荷も考慮していこうというのが、動物や石油を由来としない植物性皮革(ヴィーガンレザー)である。 日本をベースに、ヴィーガンレザーのスタートアップとして事業を営むピールラボにお話をうかがった。
パイナップルの葉からからレザーを作る
毎年パリで開かれている、技術革新をリードする企業やスタートアップのテック見本市Viva Technology(通称Viva Tech)。今年2024年も5月に開催され、会場内にはさまざまなアイディアを武器に、世界中からスタートアップ企業が集まった。その中で、日本のランドセルをブースに掲げて商品説明を行っていたのが、ピールラボである。 実際に手に取ってみたところ、植物由来の革で作ったランドセルはレザーそのもの。スウェード風に加工されており、それは本革のスウェードと見間違えるくらいの仕上がりである。
「パイナップルからできているんです」と同社創業者でありCEOのジム・ファンさん。パイナップル農家で廃棄物として捨てられる葉の部分を、「パイナップルハイド」と呼ぶレザー素材として使っているのだ。 パイナップル農園では、栽培の過程で根元に生える葉を毎回刈り取る必要がある。それらの葉は燃やすか、家畜の餌として処理されるが、燃やして廃棄すると二酸化炭素が出てしまう。家畜の餌にしてもその全てを処理できるわけではない。
「弊社でその葉を買い取ります。農園側は廃棄コストを削減できる上、収入も増えます。一方で、弊社は原料を安く仕入れられて、パイナップルハイドとして転用できます」
素材となるパイナップルの葉を安く仕入れることができるため、通常の動物性レザーと比べて20~40パーセントほど安価に製造できるそうだ。よってサステナブルな代替素材としてパイナップルハイドを使用したとしても、製品にコストが乗らない。 互いに利益になる構造だが、そもそもなぜ数ある植物の中からパイナップルなのか。それは、「ヴィーガンレザーを作る際の鍵となるのが繊維」だからだ。パイナップルの葉は繊維が多い。