「ライザップしかない」SOMPOが300億の出資を決めた理由。社長「十分回収できる」
損害保険大手のSOMPOホールディングス(以下、SOMPO)とライザップグループが、資本業務提携を結んだ。ライザップグループは、SOMPOから計約300億円の出資を受ける。 【全画像をみる】「ライザップしかない」SOMPOが300億の出資を決めた理由。社長「十分回収できる」 ライザップは2022年7月に低価格ジム「chocoZAP(チョコザップ)」のサービスを始め、同事業に2年で約370億円を投資した。店舗数と会員数はともに急成長した一方で、足元の財務状況は悪化していた。SOMPOによる出資を得ることで、財務状況が改善する。 SOMPOにとっては300億円という決して小さくない額の出資だが、チョコザップの持つ顧客接点やデータの活用などによって、「十分回収が見込める」とする。
SOMPOとライザップ「相互補完の関係」
「損保グループがまだ持っていないフィットネスのサービスがあり、ビジネスモデル上の補完関係を得られる。さらに、ライザップグループが持つチャレンジングな精神は、我々にプラスの効果をもたらすのではないか」 7月1日、SOMPOとライザップグループが開いた会見で、SOMPOの奥村幹夫社長は協業への思いをこう語った。 SOMPOは、ライザップグループに約100億円、チョコザップ事業を手掛ける子会社のライザップに200億円の計約300億円を出資する。SOMPOのライザップに対する出資比率は23%に高まり、持分法適用会社となる。
ライザップは資金繰りに苦戦
ライザップは、低価格ジムの「チョコザップ」に短期間で多額の投資をしている。当初の経営計画では2023年3月期から4年間で500億円の投資としていたが、約2年で投資額は計画の7割超にあたる370億円に上った。2024年2月には中期経営計画を改定し、チョコザップ事業に前倒しでの投資を継続すると発表している。 積極出店や広告展開のほか、店舗にはトレーニング機器だけでなくカラオケや洗濯機、セルフネイルなど独自のサービスを次々に投下してきた。 2024年3月期の決算資料によると、「チョコザップ」の店舗数は約1500店、会員数は120万人を超えた。月次決算ベースでは黒字化も達成している。 ▶関連記事: チョコザップが「単月黒字化」。ライザップG、通期予想で赤字幅を縮小 一方で、投資が先行し、ライザップグループの業績は2024年3月期まで2期連続の赤字が続いている。金融機関との財務制限条項(コベナンツ)※に抵触するなど、ライザップグループの足元の資金繰りは厳しさを増していた。 瀬戸健社長は自身の資産管理会社からライザップグループに貸付したり、2024年3月には自身が保有する株の立会外分売を行い、売却で得た約22億円をチョコザップ事業への投資に充てたりと、社長自身が身銭を切るかたちで資金を調達してきた。 ただ、立会外分売では売却予定数に対して申し込みが約2割にとどまり、思うような資金調達ができなかった。瀬戸社長も「失敗だった」と振り返っている。 こうした状況下で新たな資金調達手法を探る中で、SOMPOに出資を呼びかけるに至ったという。 ※財務制限条項(コベナンツ)…金融機関が企業に貸し付ける際、貸し手が不利にならないよう企業の行動を制限する契約。抵触した場合、返済を求めることができる。ライザップグループは、今回のSOMPOとの資本業務提携などによって抵触状況は解消したと 発表している。
土屋咲花