<独占告白>明日引退試合のロッテ井口資仁に聞く。「もし僕が監督なら」
――メジャーは4年だけでした。5年目を前にフィリーズがオファーを出しましたよね? なのになぜ4年で。 「三塁コンバートが条件でした。三塁は経験したこともないし、二塁というポジションをまだまだ極めたかったのです。それと、もうひとつは家族の問題。いろんな生活環境を考慮すると、家族の生活を優先させたかったのです。プレーヤーとして全盛の間に日本に帰りたいという気持ちもありましたが、本当は、アメリカで終わりたかった」 ――将来はプロ野球監督を意識しますか? 「ベンチに座る機会が多くなって、“自分が監督だったら”と想定して試合を見ています。“このサインなら相手は、どう動くんだろう”、“なぜ、ここで、このサインなのかなあ”などと考えるようになりました。試合展開を読みながら、自分の代打出場へ生かし、配球も見ています」 ――ホワイトソックスでは、ギーエン監督が標榜する「スマートベースベール」で世界一になりました。井口さんが、監督をやる場合の野球観に影響を与えましたか。 「足を使える野球はしたいですね。僕自身がそこで成功したし、足には不調がありません。チームとして足を使い掻き回したいですよね。このZOZOマリンは、ホームランが出にくい球場です。ホームランよりも、二塁打、三塁打。メンバー的には、小技のできる選手が多いので足を使えるチームです。もっと、そこを意識すれば強くなるんじゃないか、と考えたりします。走塁は、いわゆるグリーンライトで選手に任せたい。選手の走塁への意欲も増しますよ。このチームの監督をやるならば、そういう野球をしてみたいですね」 ――かなり具体的に監督像を描いているのですね? 「泥臭く勝ちたいですね。カンカン打つチームに采配は関係ないんです。スクイズでもセーフティスクイズのサインは、監督の逃げだと僕は考えています。失敗すれば選手のミスというサインは、ベンチの読みではなんでもない。近年、スクイズをやるチームが減っていることは確かですが、僕が監督になった場合は、『このボールで』というサインで勝負したいですね」 野球への情熱は冷めやらない。しかし、引退を決めてから野球ノートに書くページが減った。 「今は、何もしていません。ノートもつけることないです」という。 ――常に目標を設定され、自らをマネジメントされてきた井口さんは、2000本を達成してからは、何を目標にされていたのですか? 「そこから、ある意味目標がなくなったんです。自分の中で向上できてないなあと感じることが多くなりました」 そもそも、この人は、なぜ引退を決めたのかが? わからなかったが、インタビューの途中でふと思った。成し遂げなければならない強い目標を失ったことが、きっかけになったのではないか……と。 だが、引退試合を直前に控えて目標がハッキリとあるという。 「今の目標は引退試合でホームランを打つこと。4打席とも右方向へ打ちたい。今、それを追い求めて練習しています」 9月24日。井口資仁。ラストゲーム。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)