中国軍、軍事演習を当日発表 緊張の急激な高まりを避ける狙いか=専門家/台湾
(台北中央社)中国人民解放軍は14日、「連合利剣2024B」と名付けた軍事演習を台湾周辺で実施した。専門家は中国が実施を事前に通知せずに当日発表したことについて、心理的な影響力を強化し、何かあれば即座に台湾周辺で任務を実施する能力が中国の海・空戦力にはあるということを外部に知らしめると同時に、正式な大規模演習によって緊張を一気に高めることを避ける狙いもあると分析した。 中国軍が「連合利剣」と題した軍事演習を実施するのは3度目。昨年4月、蔡英文(さいえいぶん)総統(当時)が「民主主義パートナー共栄の旅」と銘打った中米歴訪から帰国した翌日の同8日から10日までの3日間にわたって「連合利剣」を行った他、頼清徳(らいせいとく)総統就任直後の今年5月23、24日には「連合利剣2024A」を展開した。 両岸(台湾と中国)関係などを研究する非営利団体、中華戦略前瞻協会の揭仲研究員兼秘書長は中央社の取材に対し、現在のところ、「連合利剣」に共通している特徴は実施当日に発表されることだと分析。2022年8月、米国のペロシ下院議長(当時)の訪台後に実施された大規模軍事演習では事前に演習エリアの経度と緯度が公表されていたことに触れ、今回の演習には当時ほどの緊張感はないとした。 また、「連合利剣」のような無予告の演習は、演習エリアを図で示しただけであり、商船や民用機には回避するすべがないとし、台湾周辺で実弾射撃は行われず、海空の交通を直接的に妨げることはないと説明した。 一方、今回の演習は5月の「2024A」とは明らかに異なる点があると指摘し、空母「遼寧艦」の参加などを挙げた。国防部(国防省)は13日、「遼寧」が同日、台湾とフィリピンの間のバシー海峡付近の海域に入ったとし、西太平洋で活動を行う可能性があるとの見方を示していた。 人民解放軍の研究を専門とする淡江大学国際関係・戦略研究所の林穎佑助理教授(助教)は23年の「連合利剣」演習では空母「山東」が西太平洋で訓練を行っていたと指摘。「2024A」には空母は参加しなかったことから、今回は23年の演習の比較対象になるとし、今回の演習の重点は大規模改修を経た遼寧の作戦能力を検証することにあると推測されると述べた。 また、朝鮮半島情勢の緊張の高まりを背景に、米軍に朝鮮半島と台湾海峡の二つの危機に同時に対処する能力があるのかを試す狙いもあると推測できると語った。 人民解放軍で台湾方面などを管轄する東部戦区は14日午後6時、軍事演習の終了を発表した。 (張淑伶、游凱翔/編集:名切千絵)