おふくろの味「漬け物」がピンチ!?地域の味覚を「道の駅」で継承 食品衛生法改正の波紋(島根)
山陰中央テレビ
道の駅や直売所などで販売されている「手作り」の漬物が、ピンチを迎えています。これは食品衛生法が改正され、6月1日から販売に保健所の許可が必要になり、衛生的な製造設備を整えることなどが求められているからです。個人や小規模な生産者の中には経済的な負担が大きく、販売をあきらめる例が少なくないといいます。現状を取材しました。 取材に訪れたのは、松江市郊外の道の駅。県内産の野菜などのほか、地元の人が手作りした「漬物」も店頭に並んでいます。ところが…。 村上遥アナウンサー: こちらに並んでいる漬物すべてが、5月末で無くなるということなんです。 この道の駅には、松江特産の「津田かぶ」やらっきょうなどを使った手作りの漬物が並び、漬物だけで年間約100万円の売り上げがありましたが、今では20人以上いた生産者のほとんどが出荷をやめているといいます。その理由は…。 食品衛生法改正です。2012年に北海道で起きた白菜の浅漬けを原因とする腸管出血性大腸菌・O157による集団食中毒で、8人が死亡したことなどを受けて、2021年に食品衛生法が改正され、漬物の販売は「届け出制」から「許可制」に変更。これまでは、家庭の台所で作った漬物でも保健所に届け出をしていれば販売可能でしたが、6月からは、台所とは別に衛生的な製造設備を整えるなどして条件を満たした上で、保健所から許可を受けなければ販売ができなくなります。個人や零細業者に配慮して設けられた3年間の猶予期間も5月末で終了しますが、新たな設備投資費が負担となり、高齢者を中心に漬物の販売をあきらめる人が少なくありません。 県内では、食品衛生法改正の猶予期限が終了するのを前に、漬物の直売所が閉店を余儀なくされるケースも出ています。地域で受け継がれてきた味が途絶えてしまうピンチです。 出雲市佐田町の漬物の直売所「雲海の館」では…。 常連客: とても美味しいですので、毎回買ってました。産直の方が作られる漬け物はすごく美味しい。 常連客: ちょっと残念。おふくろの味というか手作りの良さがあって。 道の駅本庄・安部寿鶴子駅長: 地元の味が消えていくことを皆さん悲しく思っています。 このピンチに松江市の道の駅本庄では、「地域の味」を守る新たな取り組みを始めました。 道の駅本庄・安部寿鶴子駅長: こちらが「おふくろの味ほんじょーや」でございます。 店舗の隣に、自前の漬物加工場を開設しました。 道の駅本庄・安部寿鶴子駅長: 漬物を作る加工場には、自動水洗の手洗い場が必要。ここでまず手が洗えること。次はシンクが2層でないといけない。下洗いをして本洗いをする用に。 加工場では衛生管理を徹底、保健所の許可に必要な条件をクリアしています。 道の駅本庄・安部寿鶴子駅長: ガツンと辛いのを作りましょう。大体2キロのナスに対して、辛子を50グラム入れる。 この日、作っていたのは人気が高かった「なすびのワサビ漬け」です。法改正で継続を諦めた地元の生産者からレシピを受け継ぎ、味を再現しました。 村上遥アナウンサー: 後からガツンと辛さがきます。 ほかにも「フキの酢漬け」や「しいたけのらっきょう酢漬け」など、地元産の野菜を使ったオリジナルの漬物も製造し、道の駅で販売します。加工場には冷蔵設備も併設、材料になる野菜や加工された漬物を保管、加工、販売できる期間を伸ばすことができるようになりました。こうした設備の整備にかかったのは約600万円で 、県の補助金約300万円を活用しました。 道の駅本庄・安部寿鶴子駅長: この加工場をいかにフル活用して、ここでいかに売り上げを作っていくかがこれからの課題です。 道の駅本庄では、オリジナル商品の開発だけでなく、地元の生産者のレシピの再現にも取り組んで品ぞろえを充実、貴重な地域の食文化・漬物を次の世代に伝えていきたいとしています。
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