つるの剛士、“最強の自己肯定感”を育んだ両親からの言葉「親との関わりはそれほど“密”ではなかったけれど…」
自分の存在意味を感じられるかは、子どもの生き方に影響する
つるの:それは、生徒たちの家庭環境も関係していたのですか? いわママ:家庭環境は大きいと感じました。児童養護施設から通っている子、祖父母に育てられている子、シングルの親、親の再婚で義親とうまくいっていない子等々、いわゆる“普通の家庭”とは異なる環境で過ごす子どもたちが多かったですね。 つるの:「家庭環境が要因」とひとくくりにしてしまうと、どうしようもないというか……学校の先生の立場ではなかなか踏み込めないことでもありますしね。でも、同じような家庭環境の子どもの中にも、いろんな希望を持って努力したり、現状打破しようとがんばったりしている子どもたちも多いと思います。いわママさんの学校の生徒の中にも、無気力ではない子どもがいたのではないですか? その違いはどこにあるのでしょう? いわママ:学校側は「高校卒業の資格を手に入れさせよう」「登校させて、卒業をさせよう」ということを最大ミッションとして取り組んでいました。つるのさんがおっしゃるように「なんとか現状打破しよう」とか「一日も早く家を出て、独立しよう」と、先の目標を見据えることができた子どもは、がんばっていました。 ただなんといっても「自己肯定感」の低さは大きくて、自分を見守ってくれる大人が近くにいるかいないか、自分の存在意味をしっかり感じることができているかどうかが、前に進む気力の有無に関わり、その子どもの“生き方”に影響するのだなと痛感しました。
「おまえは、父さんと母さんの子だから大丈夫!」
いわママ:つるのさんは、自己肯定感が高いように見受けられるのですが、それは親御さんの育て方など、どんなことが関係しているのでしょう? つるの:そうですね、自己肯定感は高いです! 奥さんからも「つるちゃんほど自己肯定感が高い人はいない」言われています(笑)。僕は4人兄妹。父は銀行員で、母は専業主婦でしたが多趣味で、昼間は家にいることが少ない人でした。というわけで、兄妹4人だけで過ごすことが多く、親との関りはそれほど“密”ではありませんでした。 でも、企業戦士のような父は、少しでも時間ができると近場でドライブしてくれたり、自転車で買い物に行ったりして、その間はとめどなくいろいろな話をしてくれました。今もその情景や会話が思い出されるくらいなので、それはそれは濃密な親子の時間だったのだと思います。 それこそ僕は学生の時は勉強が嫌いで、成績も良くなかったけど、愛されている、大切にされている、見守ってくれているというのを感じることができると、「自分の存在」を確認することができ、なにより「安心感」を持つことができますよね。 また、僕の人間形成の根幹となっているのは、両親から言われ続けた「おまえは、父さんと母さんの子どもだから大丈夫!」という言葉。何が大丈夫なんだろうって思いますよね? 何の根拠もない言葉に感じるでしょう? でもその言葉で、不思議なくらい「根拠のない自信」が僕に植え付けられたんです。大人になった今でも、壁にぶち当たったときにはその言葉に支えられているところがあるくらいですから! だから、うちの子どもたちにも「パパとママの子だから絶対に大丈夫!」と言っているんです。 いわママ:いい言葉ですね、なんだか言われ続けていると「大丈夫」な気がしてきます。 つるの:そうなんですよ。でも、親になって自分がその言葉を発してみると「覚悟」がないと言えないなと感じる言葉でした。「大丈夫」って言うからには、大丈夫な親でなければ話にならない。また夫婦や親としてだけでなく、ひとりの人間として、子どもから見たときに「大丈夫」と思わせる対象になっていなければならないとも思うんです。そのためには、一生懸命何かに取り組んだりする姿勢や、イキイキしている姿を見せたりすることが大切だなとも。そうすれば「幸せそうなパパたちの子だもの、私も大丈夫に決まってる!」と、肌で感じてくれるんじゃないかな。 僕が今、口にして思ったのは、昔は両親はわりとラフにこの言葉を使っていると思っていたけど、けっこう考え抜いて、覚悟を持って言っていたんだなと感じました。 いわママ:そうですね。言い切るには、勇気がいる言葉だとも思いました。だからこそ、つるのさん自身がそうであったように、子どもに“刺さる”言葉であり、安心感を植え付けさせる言葉なんでしょうね。私も「大丈夫!」と、子どもに言ってあげられるようになりたいと思います。